超高齢化の島「網地島」はよみがえるか 震災で打撃を受けた離島で復興に向けた取り組みが進む
そして翌週の火曜日および水曜日に物資が島に届く。婦人会は水曜日の午後に青空復興市を開催し、買いに来ることができない高齢者宅を一軒一軒訪ねて物資を届ける。
配達するのは平均年齢が70歳を超す婦人会の中心メンバー。届け先は85~90歳にもなる高齢者が多い。
小野寺さんは、「業者が来るまでのつなぎとして引き受けたのが、つなぎでなくなってしまった。配達する側も年を取っているので本当に大変です」と打ち明ける。
島民を守る診療所
網地島の、もう一つの重要なライフラインが診療所だ。かつての小学校校舎を利用して開院したため、「網小(あみしょう)医院」という名を持つ。
「牡鹿町立病院(現在の石巻市立牡鹿病院)の分院として設けられていた診療所がなくなって住民が困っていたところに、栃木県にある医療法人の理事長(当時)の篤志によって設立されたのが網小医院。まさに島の宝です」
島の漁協組合長を務め、誘致に心血を注いだ小野勝吉(しょうきち)さん(88)がこう振り返る。
網小医院では現在、水曜日から日曜日まで週5日にわたる外来診療や患者宅への訪問診療が続けられている。院内にはCTスキャン装置があり、遠隔画像診断もできる。
島内の寺で住職を務める木津川眞雄さん(73)は、食事中に心筋梗塞で倒れた後、網小医院に運ばれた。その後、3カ月半も意識が戻らなかったが、一命を取り留めた。
「もし、網小医院で応急処置を受けていなかったら、今頃は命がなかったと思う」(木津川さん)
ただ、網小医院の運営は楽ではない。数年前までは入院患者を受け入れていたが、現在は要介護の高齢者が入所する老人保健施設に転換した。17床の施設は満床だが、外来患者は1日20人程度。人口減少が続く中、診療所の存続を危ぶむ住民も少なくない。
小野喜代男(きよお)・長渡中小路(ふたわたしなかしょうじ)行政区長(75)もその一人だ。
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