パナソニックの中国傾注がどうにも心配な理由 コロナショックで前提は大きく変わっている
多額の内部留保があっても投資しない企業は、株主重視経営からすれば劣等生とされているが、「賭場」に大金を投じる経営者が立派なのか。ギャンブルに賭ける人は、いつも勝ちを想定している。その点、経営者も似ている。経営計画を発表するとき、「たぶん、向こう3年間もだめでしょう」と口にする経営者は誰もいない。皆、前向きな発言をするが、結果的に負けギャンブラーとなっている経営者も少なくない。
パナソニックの幹部と中国事業に関して話をすると、必ず、松下幸之助氏と鄧小平氏の約束が出てくる。創業者が大切にした中国に入れ込んだ結果、勝てなかったでは話にならない。創業者の偉業といえども時代により評価は変わる。織田信長は戦国の世に生きたからこそ、刀を振り回し天下を取れたが、今、新幹線の中で同じ行動をすると、凶悪犯罪者として逮捕されるだけである。
津賀社長の腹は決まったのかもしれないが
津賀社長は2020年6月以降も続投することになり就任9年目を迎える。1977年から9年間社長を務めた山下俊彦氏と並び、創業者の松下幸之助氏ら創業家を除けば最長となる長期政権を担う。最近「失うものは何もない」と口にするようになった。この発言からは、腹が決まったとも受け取れるが、一方では、一か八かの賭けに出る「大胆な経営者」になるのではないかと心配になってくる。
アナリストたちは、「ビジョンがない」、「具体的戦略がない」と津賀社長を吊るし上げている。もちろん、明確なビジョンと具体的な経営戦略を打ち出し実現するに越したことはない。最近、「比喩が分からない人が増えた」という声をよく聞くようになったので、そのような方々に誤解されては困るが、(いい意味で)臆病な面が見えてくれば、その点も高く評価したい。
コロナウイルス感染問題が落ち着けば、同市場で売り上げが回復し、津賀社長在任中に業績は好転するかもしれない。しかし、社長はその後の持続的経営も考えておかなくてはならない。今こそ、「日に新た」な姿勢を見せてほしい。
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