経済活動が大きく抑制される状況が続けば、企業の手元資金が不足していき、そして信用リスクの高まりに金融機関などが直面する。そういう状況に備え、銀行などは手元にキャッシュを増やすことが最優先になる。2008年のリーマンショック時のように、金融市場から流動性がほぼ枯渇した危機にはまだ至っていないが、同様の状況が起こり始めている。当時は、金融システムが機能不全に陥り流動性が干上がり、そして戦後最大級の経済の大収縮が起こった。
3月10日前後から金融市場では流動性が不足気味となっており、仮にこうした状況が続けば、今後想定される景気後退が2008年同様の大収縮となる。筆者は、こうした事態に危機感を抱いたことが、FRB(米連邦準備制度理事会)が15日の日曜日に2回目の緊急会合を開き、政策金利をゼロまで引き下げるなどの果敢な金融緩和を決断させた最大の要因だと考えている。
流動性に危機を感じた金融市場が落ち着くかどうかは、金融システムを維持する政策対応に依存するだろう。FRBを中心に世界の中央銀行が潤沢な流動性を供給することは言うまでもないが、今後起こるかもしれない金融機関の資本毀損、そして金融システムの崩壊を防ぐことが必要になる。
こうした観点で、2008年と2020年の米欧の金融機関の状況を比較してみよう。2008年のリーマンショックの震源地となった米欧大手投資銀行は、世界で高騰する不動産価格をテコに巨額なサブプライムローンを組成し、見えないところでとてつもない信用膨張を起こしていた。
だがリーマンショック後には金融機関への規制が強化されたため、10年前と同様の行き過ぎたリスクテイクが、2010年以降金融機関で広がっていたようには思われない。
一方、2010年以降は米欧での社債市場の拡大を通じて、アメリカやヨーロッパの企業債務が増え続ける信用拡大が起きていた可能性がある。株価下落とともに、社債インデックスを裏づけとしたETFの価格も同様に急落しており、これは企業債務ブームが崩れたことを意味しているだろう。
金融規制の強化で闇雲な信用膨張は難しくなった
ただ、2008年に破裂したサブプライムローンの組成がもたらしたのと同規模の信用膨張が、2010年以降の企業債務拡大によって起きていた可能性は低いと思われる。リーマンショック後に金融規制が強化され闇雲な信用膨張は難しかったためだ。このため、筆者は現時点では、今回のアメリカの景気後退は、2000年の同国株式市場における「ITバブル崩壊と同程度のインパクト」になると予想している。
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