筆者が想定するように、リーマンショック同様の金融システム危機が回避されるという前提で、今後の世界的な景気後退がどの程度長引き深刻な影響をもたらすか考えよう。これを決める主たる変数は、まずは、新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う経済活動の萎縮がどれくらいの期間にわたり続くかである。
筆者は、現時点で肺炎封じ込めに成功しつつある中国と似たような展開が各地域で起こると想定している。もちろん、3月中旬以降イタリアで死者が大きく増えていることなどを踏まえると、やや楽観的な想定かもしれない。ただ、新型コロナウイルス感染拡大のリスクを考え巡らすことは、むしろ相場見通しを曇らせる可能性があるので、「誰も分からない」と割り切って、筆者は考えている。
所得減を直接補う財政政策発動が効果的な政策ツールに
もう一つ重要な変数は、各国政府の財政政策である。すでに、ほとんどの先進国の中央銀行が政策金利をゼロ程度まで引き下げており、流動性供給政策も協調して実現した。ただ、新型コロナウイルスによる経済活動の停滞そのものに歯止めをかける効果は限定的になる。一方、今後、企業・家計など民間部門の所得が大きく目減りする中で、これらの所得減を直接補う財政政策発動が効果的な政策ツールになる。
アメリカでは3月17日に給与税(社会保険料)の大幅減税がトランプ政権から発表されており、緊縮財政を続けてきたドイツにおいてもアンゲラ・メルケル首相が「必要なことはなんでもする」と財政黒字にこだわらない姿勢を見せている。これらの主要国の対応が、どの程度の規模でスムーズに発動されるかはまだ判断できない。ただ、世界各国が経済の落ち込みに対して十分な財政政策を発動すれば、起こりつつある景気後退は短期間で収束させることは可能だと考える。
当面は、アメリカの金融システムの揺らぎ、新型コロナウイルスの感染状況、各国の財政政策状況、などを材料に株式市場は引き続き乱高下する状況が続く、とみられる。
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