ソフトバンクグループ、大型資産売却の思惑  自社株買い5000億円「原資ねん出」のため

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SBI証券の森行眞司シニアアナリストは「狼狽売りの流れの中で『安い』という判断はあってしかるべき」と前向きな評価を示す。自社株買いは自社の株価が安い時に買い付けるのがセオリー。株価が安ければ、同じ金額でより多くの自社株を買い付けられる。

資産売却が一つの解決策に

こうした両者の「相克」を解決する1つの手段が資産売却だ。S&Pは格付けを据え置いた理由の一つに、新規投資の抑制や資産売却などで自社株買いの財務への悪影響を吸収できる可能性があるとした。S&Pの西川弘之上席アナリストは、SBGの保有資産は「規模が大きく、上場資産が7割超で流動性も高い。平均的な信用力も高い。質の良い資産」と話す。

過去のSBGによる大規模な自社株買いは、資産売却とセットだった。昨年2月発表の6000億円の自社株買いでは、通信子会社ソフトバンク<9434.T>の上場で得た資金を活用。16年の5000億円規模の自社株買いでも、手元資金に加え、保有資産の売却資金を充当した。クレジット市場はこうした「配慮」を期待していたが、いまのところ具体的な資産売却の話は出ていない。

SMBC日興証券の原田賢太郎シニアクレジットアナリストは、資産売却を伴わない自社株買いが今後、増えていくようなら「市場環境に左右されやすい性質がより強まりかねず、クレジット投資に際して長期のリスクを取りづらくなる」と指摘する。

もっとも、現在のような経済、市場の状況では、株式とクレジットの両市場が満足できるような価格で資産売却できるかは不透明だ。SBI証券の森行氏は、経営体力のあるSBGは相場が戻るまで待つのが得策と話す。「乱調相場はいつまでも続かず、いずれ相場が改善すれば売却可能な資産や資金調達の手段も増える」と指摘する。

SBGの孫社長は、虎の子のアリババ株について今後も成長性が見込めるとして売却に否定的な立場だが、その一部の売却はあり得ると市場では見られている。傘下の米スプリント<S.N>とTモバイルUS<TMUS.O>が4月に予定する合併後に、相場動向を見ながら持ち分の一部を売却するとの思惑もある。

17日には、SBGが米シェアオフィス大手・ウィーワークへの30億ドル相当のTOB計画の撤回を検討しているとの観測報道も伝わった。S&Pは、SBGがウィーワークに対する巨額支援を打ち出したこともネガティブと捉えている。S&Pの吉村真木子主席アナリストは「財務方針通りの行動が実行されるか待つ必要がある」と話す。

SBGは、LTV25%未満の維持と2年分の社債償還資金の保持という財務方針について「変更はなく、引き続き順守していく」とコメントしている。集:石田仁志)

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