一方、日本的な組織の意思決定プロセスは、こういった欧米の組織とは大きく違ってくる。例えば、今回の新型コロナウイルスの脅威への対応などを考えてみても、日本政府をはじめ、多くの組織は、自らの意思決定に際して、時間を掛けて、最適解を導き出すということを重視している。
これは「さまざまな意見を踏まえ」もしくは「関係各所と協議のうえ」というフレーズが、必ずと言っていいほど出てきていたことからもわかるだろう。
日本の組織の意思決定プロセスにおいては、まず組織として下した判断が、間違ったものとならないように、あらゆる可能性を想定しながらじっくりと考え、「できるだけ全員が納得できるような状態で進めていく」ということが求められる。このため、よく「意思決定が遅い」と評され、ネガティブなイメージを与えてしまうことも多い。
単純な図式では説明できない
だが、新型コロナウイルスの脅威が報じられて3カ月弱経った現在、各国の政府や組織が行ってきた“最初の打ち手”に対する結果が、ある程度見えてきた中、各国が“走りながら考える”ことで導き出してきた“打ち手”は、必ずしも機能していたとは言えないものもある。
「“直近に”起こると考えられる最悪のケース」を避けるために急いで取ったはずの対応は、はたして正解だったのかは、見えていない。むしろ「さまざまな意見を踏まえ」「あらゆる可能性を想定しながらじっくりと考えた」結果導き出した、日本のやり方のほうがいい面もあったのではないかと思うこともある。
組織が危機的な事態に直面した際、トップは、その事態から脱するために、“最善の手”を尽くさなくてはならない。だが、その“最善の手”に至るまでのアプローチは1つではない。
日本の組織と欧米の組織との間で、その“最善の手”を導き出すための意思決定において異なる部分があるとすれば、それは結果につながるまでの(短期、中長期といった)時間軸の違いにある。早いからいい、遅いから悪い、という単純な図式で説明できるものではないのだ。
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