コロナ対策「日本だけ遅い」批判が軽率な理由 「意思決定の遅い組織」が正解を掴む時もある

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組織がいわゆる“危機”に直面した際に、日本的な組織と欧米の組織との間で、決定的に動きが異なる部分があるとすれば、欧米の組織は、危機的状況における意思決定の際、まず「“直近に”起こると考えられる最悪のケース」を想定し、対応するという点だろう。

仮に、少しでも、その「“直近に”起こると考えられる最悪のケース」に陥る可能性が存在するようであれば、直ちに、その可能性をゼロにするために全力で対応すべきである、という考えのもとに、リーダーは動く。

つまり、つねに「“直近に”起こると考えられる最悪のケース」から「何を守るか」を明確にし、そこに向かって最短距離で走るための意思決定を行うのが、主に欧米の組織で見られるやり方だ。そして、素早く意思決定をした後に、じっくりと考え「走りながら修正していく」というやり方で、物事を進めていく。

いずれにせよ、まずは「目の前の結果を出す」というところに全力を尽くす形で対応していくのだ。それが「初動の早さ」という形で語られるということにつながってくる。

スタンスをすぐ明らかにするのが欧米式

初動の違いのほかに、もう1点、欧米の組織でよく見られることがある。それは、自分たちの決定やスタンスを(ともすれば「大げさ」と言われかねないくらいに)明確にアピールするという点だ。

例えば、今回の新型コロナウイルスに関連した感染症対策に関する対応について、欧米の組織の場合、初動で決定した欧米への渡航制限、イベント開催の自粛、衛生管理の徹底等のアクションを行うという発表は、決定後、内外の関係者、場合によってはもっと広範囲に対して行っている。

危機的な状況における対応として、「何もやっていない」というのは、組織のリーダーとして最悪の評価となってしまう。そのため、中身はどうであれ、自らが決定したスタンスや対応方法を、何らかの形で明確にアピールすることが求められる。

きちんとアピールをすることさえできれば、少なくとも「何もやっていない」という批判を内外から受けることはない。また、つねにスタンスを明確に見せておくことで、組織としての動きがブレないよう保つこともできる。

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