ホンダと日産、中国で全工場再開も拭えぬ不安 コロナはピーク越えたが、販売激減の深刻度

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中国に4つの工場を持つトヨタは2月末までに1直体制で操業を再開。3月上旬には完全なフル操業ではないものの、本来の2直体制に戻った(四川省成都市の工場はもともと1直体制)。 同社の主力工場は天津や広州で年間生産能力はそれぞれ約50万台。感染の中心地である湖北省に拠点がなかったことで、日産やホンダに比べ生産面への影響はかなり軽減できた。東日本大震災など過去の災害を教訓に整備したサプライチェーンの状況を把握するシステムも活躍したという。 

2019年4月の上海モーターショーは多くの人でにぎわった。中国市場は日系自動車メーカーにとって重要市場の1つだ(記者撮影)

ホンダと日産も湖北・河南省以外の工場は2月中ごろから操業を再開しているが、操業度はまだ思うように上がっていない。広東省広州にあるホンダ4輪工場の稼働率は通常の半分程度にとどまっている模様だ(3月13日時点)。武漢の部品メーカーから調達している部品点数が多いうえ、湖北省に帰省した出稼ぎ労働者の復帰が遅れ、操業度向上のボトルネックになっている。

武漢で部品メーカーの操業再開が進んでいったとしても、省や市をまたぐ物流や人の移動には依然として厳しい制限がかかっており、中国国内でのサプライチェーンの本格復旧にはしばらく時間がかかりそうだ。

中国の混乱は国内生産にも影響

日系自動車メーカーが中国内で生産する完成車は基本的に中国市場向けだ。一方、サプライヤーが中国で作った部品は、日本などで生産する完成車にも多く使用されている。車1台に使われる部品は2万~3万点。素材から電装品、タイヤ、ボルトに至るまで裾野が広く、部品が数点足りないだけで車の生産に支障が出る。

実際、中国からの部品調達が滞ったことで日系自動車メーカーの国内生産にも影響が及んだ。ホンダは3月上旬に国内2工場で一部車種を減産。日産は、これまで九州や関東の工場で数日間の生産調整を実施。グループの日産車体でも、2月後半~3月上旬に九州など2工場で延べ8日間、生産を止めた。

特に九州地域ではコスト面での優位性や距離的な近さを理由に中国製部品が使われる割合が高い。日産関係者によると、九州工場で生産されるある1車種だけで燃料タンクやアルミホイール、エアバッグなど約20点もの部品が、今後の調達に懸念があるリスク部品に指定されているという。

また近年は複数の車種間で同じプラットホームを使い、部品の共通化を進めつつある。ある部品が不足すると、一気に複数車種の生産停止にまで波及してしまう可能性も高くなるわけだ。

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