ホンダと日産、中国で全工場再開も拭えぬ不安 コロナはピーク越えたが、販売激減の深刻度

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中国の2019年の新車販売台数は2576万台で、その規模は2位のアメリカ(1748万台)の1.5倍、3位の日本(519万台)の5倍弱にも及ぶ。世界中に展開する自動車メーカーはこの巨大市場に販売の多くを依存しており、日系自動車メーカーも同様だ。その中でも、ホンダと日産はいずれも世界販売台数に占める中国依存度が30%に上る。

トヨタの中国依存度は17%と、ホンダ、日産よりも低いが、近年中国で劇的な成長を遂げていた経緯がある。2019年には中国で前年比9%増の162万台を販売し、日本の販売台数(161万台)を初めて上回った。高級車「レクサス」は昨年、中国で世界販売の4分の1にあたる20万台が売れた。

トヨタは今年初めの段階で2020年の中国での販売目標を前年比8%増の176万台と発表。継続的な成長への自信を示していた中、新型コロナウイルスで冷や水を浴びせられた格好だ。2月6日の決算会見でディディエ・ルロワ副社長は、「新型肺炎のインパクトは本当に分からない。こうなると何が起こるかわからない」と強い懸念を示した。今後、販売目標を下方修正する可能性もある。

日産への影響は特に大きい

中国では原則、現地メーカーとの折半出資による合弁会社で自動車の生産・販売事業を展開しなければならず、その収益は連結業績上、持ち分法投資損益の項目で反映される。例えば、日産の2019年度の持ち分利益は2185億円で、大半は中国で稼いだものだ。

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そのドル箱市場で販売低迷と低稼働率が続けば、死活問題である。ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生シニアアナリストの試算では、仮に中国での販売台数が年間10%減少した場合、ホンダと日産の連結純利益をいずれも650億円下押しするという。とりわけ、世界的な販売不振が続く日産は純利益の水準自体が低く(2019年度予想650億円)、日系自動車メーカーの中でも業績への影響が大きい。

米中貿易紛争などの影響で一昨年から前年割れが続くなど中国市場はもともと停滞気味であったとはいえ、今後も各自動車メーカーの世界戦略の中軸を担う存在には変わりない。

ここに来てアメリカでも新型コロナウイルスが猛威を奮い始めており、現地の新車販売に大きな悪影響を及ぼす可能性も出てきた。中国とアメリカという世界の2大市場が共倒れになった場合には、両国を収益源とする日系自動車メーカーへの影響は計り知れない。

岸本 桂司 東洋経済 記者

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きしもと けいじ / Keiji Kishimoto

全国紙勤務を経て、2018年1月に東洋経済新報社入社。自動車や百貨店、アパレルなどの業界担当記者を経て、2023年4月から編集局証券部で「会社四季報 業界地図」などの編集担当。趣味はサッカー観戦、フットサル、読書、映画鑑賞。

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木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年10月から東洋経済編集部でニュースや特集の編集を担当。

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