トム・ハンクス感染がアメリカに招いた大恐怖 コロナを理由に人気映画も続々「公開延期」に

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カンヌ映画祭も、SXSWも、イベントの保険には入っているが、感染病はカバーされないのだそうだ。経済的ダメージは非常に大きく、また、集客をあてにしていた街全体も大損害を受ける。

映画もまた、被害者だ。カンヌが中止になった場合、ここでの華やかなプレミアを狙って提出されている数多くの作品は、宙に浮くことになる。すぐに作戦を変えて9月頭のヴェネツィア映画祭に出す手もあるが、コロナで最も被害に遭っているヴェネツィアが、その頃までに正常化しているかは不明だ。その玉突きは、トロントやニューヨーク映画祭にも及び、あぶれてしまって発見してもらえる機会を失う映画も出てくるだろう。

「存続の危機」に直面した映画館

それは、映画祭でかかるような高尚な作品だけにかぎらない。『007』や『F9』のような超大作なら心配はないにしても、それ以下の映画だと、公開延期でタイミングを失い、そのままお蔵入り、あるいはストリーミングに直行となってしまうものも出てくるかもしれない。

また、ハンクスの映画に続き、ほかにもキャストやクルーの安全のために撮影を中止する映画が続出したが、このせいで、すべてが落ち着いたとき、映画館でかける作品が少ないという状況になることも考えられる。この非常事態で映画館に行かないのがデフォルトになったところへ、映画館の魅力がさらに下がるとあれば、劇場主には大危機だ。

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そうでなくても近年、劇場主たちは、Netflixをはじめとするストリーミングに客を奪われてきた。そう思うと、ハリウッドのコロナパニックを幕開けたのがハンクスだったのは、妙な巡り合わせのように思えてくる。

テレビと映画のクオリティーの差がどんどん狭まり、テレビにも出演する映画スターが増えていくなか、変わらず映画だけに出てきたハンクスは、アメリカの映画俳優の象徴的存在だからだ。ウイルスはわざわざ、そんな彼をメッセンジャーに選んだのか。だとしたら、ますます憎らしくなる。

猿渡 由紀 L.A.在住映画ジャーナリスト

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さるわたり ゆき / Yuki Saruwatari

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒業。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場リポート記事、ハリウッド事情のコラムを、『シュプール』『ハーパース バザー日本版』『バイラ』『週刊SPA!』『Movie ぴあ』『キネマ旬報』のほか、雑誌や新聞、Yahoo、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。
X:@yukisaruwatari
 

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