「国産連節バス」はダイムラーの牙城を崩せるか いすゞと日野が共同開発、「シターロG」に挑む

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今回、2社が共同開発した連節バスは、最新のディーゼルエンジンと大出力モーターを組み合わたハイブリッドシステムを動力とし、パワーと省燃費性を両立。PMやNOxなど有害物質の排出量を削減するため、排ガス後処理装置にも先端環境技術を用いた。

連節バスは全長が18メートルもあるので通常の路線バスより死角が多い。車外側方や後部車両などに車載カメラが搭載され、運転手は複数のモニターを見ながら状況を把握する(記者撮影)

安全対策としては、路線バスで世界初となるドライバー異常時対応システムを搭載。走行中に運転手が急病で運転不可能な状態に陥った際、運転手や乗客が非常ブレーキスイッチを押せば、異常を知らせる音声アナウンスとともに減速して停止する仕組みだ。

日本の道路事情にも配慮した。シターロGが全幅2.55メートルなのに対し、今回の国産車両の全幅は2.495メートル。また、開発に際しては、後部車両の車輪の位置決めで入念な調整を繰り返し、最小回転半径や右左折時に必要な道路幅を極力抑えた。 

いすゞの鈴木チーフエンジニアは、こうした数値に表れる部分以外にも国産車両ならではのセールポイントがあるという。「外国製バスは運転席のボタン・機器の配置などが特殊なうえ、部品の取り寄せにも時間がかかると聞く。その点、普段使いなれているわれわれの車両なら、運転手が適応しやすく、整備などのサポート体制も手厚い。こうした安心感も大きな強みだ」。

2020年度は計12台の納入が確定 

受注活動は順調で、横浜市以外でも複数社への納入がすでに決まっている。東京都が進める都心と臨海部を結ぶ東京BRT(バス高速輸送システム)事業もその1つ。運行事業者に選ばれた京成バスは5月からプレ運行として虎ノ門―晴海間などの運行を開始する予定で、燃料電池車など8台の単車両型バスのほか、7月にいすゞのハイブリッド連節バスを1台導入する。

また、三重交通は伊勢神宮への参拝客増加を受け、2021年3月までに2台の連節バスを導入する計画だ。同社はグループ内にいすゞ系列のトラック・バス販社があり、連節バスもいすゞの車両を発注した。

この2件以外にも複数の商談が成約し、2020年度にはいすゞと日野の合計で6社に12台を納入する。通常の路線バスの注文をこなしつつの生産となるため、製造を担うジェイ・バス宇都宮工場の連節バスの生産能力は月1.4台程度と少なく、すでに確定分だけで今年は生産ラインが埋まっている状況だ。翌年度についても、三重の三岐鉄道などが導入に向けた準備を進めている。

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