国内初、大阪メトロ「顔認証改札」の実力と課題 昨年末開始、4社が実験参加したが違いは?

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今回、大阪メトロは、顔認証タイプと同時に、QRコード改札機の実証実験も行っている。利用者が改札機の読み取り装置に切符のQRコードをあてると、サーバーがIDと乗車区間などの情報を照合して判定し、改札ゲートが入出場の可否を判断する仕組みになっている。改札機とサーバーでデータをやりとりするため処理スピードがやや遅めなのが難点だが、すでに沖縄都市モノレールなどで実用化されている。

森ノ宮駅の実験機はオムロン製で、同社が大阪メトロに納入している自動改札機と似たシンプルなデザインである(筆者撮影)

近い将来、改札機をICカード・顔認証・QRコードの3タイプに集約して、磁気券対応の改札機をすべて置き換えることを考えている。そのためには、直通運転をしている阪急と近鉄、北大阪急行電鉄と連携を深めるとともに、ほかの在阪各社ともメリットを共有することが大切になる。

顔認証改札機、確かに便利なシステムであるが、大きな課題が2つ残されている。まずは「早さ」だ。

大阪メトロによると、ICカード改札機の設計上の通過時間は1分あたり40人とのこと。顔認証改札機の動きを見ている限り、ワンテンポ遅く感じた。今後の技術開発で、どこまでICカードの反応速度に肉薄できるかが焦点となる。

もう1つは、「精度」だ。

NECの顔認証システムは2億人のデータから顔を識別でき、静止画の認証エラー率は0.5%だという。ただ、先述のように、マスクやヘルメットの付け方1つで、誤作動が起きている。海外では、黒人やアジア系、女性、子どもは誤認されやすい傾向があるとの報告もある。

空港のセキュリティーのように「早さ」を求めないのなら「精度」は上がるが、都市部の鉄道駅では両立できなければ使えない。

梅田駅の朝ラッシュに対応できる?

大阪メトロで最も混雑する駅は、御堂筋線梅田駅である。大阪の中心地で、JRや阪神、阪急、地下鉄谷町線・四つ橋線の乗換駅であるため、1日の乗降客数は44万人と極端に利用が多い。朝の混雑時に入場規制がかかることも珍しくない。

認証できなかった利用者が1人でもいれば列が動かなくなる。 列が混乱すると、カメラが認証した人と、改札機を通過した人の順番が互い違いになることもありうる。

そんな梅田駅の朝ラッシュに対応できるのか。前田さんは「現状ではまだ難しい」と感じているが、1つの対応策として、顔認証改札機のゲートを長くすることを検討しているという。乗客が改札機までまっすぐ歩くよう誘導することで、割り込みなどのトラブルを防止するためのアイデアである。

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