「自宅待機」を無視する患者に問われる法的責任 故意に病気をうつすと刑事罰を受けることも
愛知県蒲郡市は3月5日、新型コロナウイルスの感染が判明し、受け入れ先の医療機関が見つかるまで自宅待機の要請を受けていた50代の男性が、要請を無視して市内の飲食店を訪れていたことを明らかにした。
報道によれば、この男性は自宅を出る前に、「ウイルスをばらまいてやる」などと家族に話していたという。その後、男性はタクシーで移動。訪れた飲食店でも「新型コロナウイルスに感染している」などと話し、騒ぎになったという。
報じられたとおりならば、男性は意図的に飲食店を訪れたことになるが、法的責任はどうなるのだろうか。また、今回のように、自宅待機要請を無視する人に対する予防策はなかったのだろうか。澤井康生弁護士に聞いた。
消毒代や休業補償を請求される可能性も
――男性が寄った飲食店では消毒が進められているようです。民事上の責任はないのでしょうか?
発言が事実なら、男性は自宅待機要請を無視し、コロナウイルスをばらまいて他人に感染させる意思でタクシーに乗車し、飲食店を利用したことになります。周囲の人や相手方に何らかの損害を生じさせた場合、民事上の不法行為責任を負います。
例えば、周囲の人に感染させて被害者が出た場合にはその治療費、休業損害金、通院慰謝料などを賠償する義務が生じます。
また、仮に感染者が出なかった場合であってもタクシーの車内や飲食店の店舗内を消毒する必要が生じることから、消毒作業代やその間の休業補償なども賠償する義務が生じます。