安全性についても「格段の問題は想定できない」(森下教授)。アンジェスの海外パートナーが行ったDNAワクチン開発(治験)では、1400人以上の被験者に特段の問題は見られなかったというのだ。
阪大とアンジェスは予防用のDNAワクチンだけでなく、このワクチンを馬に接種して作る抗血清製剤の開発も同時に進めるという。原理は予防用ワクチンと同じだが、違いは予防用でなく、罹患(りかん)した患者の緊急治療用などを想定する点だ。
臨床試験入りまでに最低でも半年間
よいことずくめの開発法に見えるが、この製造法で作られたワクチンはまだ世に出ていない。製造期間が短くても、まずはマウスや猿などを使い、安全性を確認するための動物実験が必要で、その後行われる人間に対する有効性と安全性を確かめる臨床試験(治験)に入るまでには、最低でも「半年はかかる」(森下教授)。
エボラ出血熱や鳥インフルエンザでワクチンの開発に着手した例はあるが、治験に入る前に感染が終息。治験に必要な患者が集まらず、治験を断念した経緯がある。
今回も同じことが起きる可能性は否定できないが、それでも開発に挑む価値はある。運よく治験に持ち込み、承認を得られれば、コロナウイルスの変異ウイルスが突発的に広まった場合の、有効な予防策や治療薬を用意できる。しかも今回は「日本発」のウイルス薬だ。
阪大発のバイオベンチャーであるアンジェスは、2019年に日本メーカー初となる遺伝子治療薬の承認・販売にこぎ着けた。1999年の設立から20年後の成功談が注目されたが、この遺伝子治療薬はアメリカなどの治験プロセスでいったん取り下げ、開発中止に追いこまれたいきさつがある。
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