販売活動については「ほとんどできていない」(同幹部)と嘆く。同社が機械を製造しても、販売先の工場が稼働していない場合もある。自動車関連業種を中心にサプライチェーンが滞っていることから、顧客が他の部品を調達できず、牧野フライスの機械の納入が先送りになる事態も続出している。
今期の売り上げだけでなく、受注の落ち込みも深刻だ。
工作機械はスマートフォンや自動車などあらゆる製品の部品を加工する機械で、受注高は製造業の設備投資動向に左右される。新型コロナウイルスの終息時期すらもわからない中、中国だけでなく国内やアメリカの顧客の間でも、先行き不安から設備投資を様子見する企業が増えている。中国から部品が届かないために、機械の発注を遅らせている海外企業もある。
1月以降の受注は予定の半分以下に
牧野フライスの幹部は「1月以降の受注は激減し、予定の半分以下だ」と話す。ヨーロッパで3月末に見込んでいた自動車と航空機関連の受注も一部4月以降にずれ込む見込みだ。牧野フライス自身も、3月末までに完了予定だった上海近郊の放電加工機工場の増設が遅れ、新たに中国で開設予定だった営業拠点の計画も一時停止している。
一方、国内工作機械大手のオークマも、企業の設備投資意欲の低下を警戒している。中国では春節後に拠点へ戻ってきている販売員が少ないため、「営業活動ができておらず、そもそも顧客の設備投資マインドもつかみにくい」(オークマ幹部)と話す。
工作機械業界は、米中貿易摩擦や自動車市場の低迷を受け、2018年から受注が減少し続けていた。しかし、2019年半ば以降、米中交渉が部分的に合意に達し、半導体や5G関連に向けた投資が増え始めていたことから、業界では2020年前半に受注が反転するとの期待が高まっていた。
「国内の半導体関連投資はこの状況下でも根強い」(オークマ幹部)との声も一方ではあり、新型コロナウイルスで失速した分は2021年3月期中に取り戻すという見方もある。昨年から業界では「今が受注の底ではないか」と言われ実際には底這う状態が続いていた。
そこに水を差したのが新型コロナウイルスだった。2月20日に行われた日本工作機械工業会の会見で飯村幸生会長(東芝機械会長)は、「(サプライチェーンの停滞で)受注の回復時期は最低でも3カ月は遅れるだろう」と述べた。
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