前述した「スッキリ」では加藤さんがハッキリ苦言を呈したものの、「店頭の棚からトイレットペーパーがなくなったこと」をトピックスとしてフィーチャーしていた番組は多々見られました。これは視聴者の目を引くための構成ですが、結果的に不安を増大させ、買い占めを促してしまったそれらの番組も「バカ」「愚か者」。これはテレビ番組だけでなく、空っぽの棚を撮影してSNSにアップしている人々も同様でしょう。
ただ、1つ救われたのは、3月3日に米子医療生活協同組合が、「職員が『トイレットペーパーが品薄になる』というデマ投稿者の1人だった」ことを明かし、謝罪コメントを出したこと。批判覚悟で正直に謝罪したことで、デマを流布した本人に反省を促し、「バカ」「愚か者」から救い出すきっかけを作ってあげたのです。
この例に限らず、デマを流布している人の目を覚ますことができるのは身近な人だけ。知らない人に独り善がりの正義感を燃やして言葉をかけても効果は薄く、知っている人だからこそ変化が期待できるものです。
「パニック買い」ではなく利己心の表れ
買い占めされたのはトイレットペーパーのみならず、ティッシュペーパー、コメ、パン、麺類、冷凍食品など多岐にわたりました。それらの購買行動を「パニック買い」と呼ぶ記事もありましたが、本質はそこではないでしょう。
デマとわかっているのについ買ってしまうのは、決してパニックになっているからではなく、「ふだんの生活を変えられたくない」「日常的に得ている自由や便利を失いたくない」という利己心からくるもの。日ごろ「欲しいものを選んで届けてもらえる」「好きなときに好きなものを好きな場所で見られる」「低価格でさまざまな料理を食べられる」など、収入の多少にかかわらず、それなりに自由で便利な生活を送っている現代人は、それが少しでも損なわれることを極端に嫌がるものです。
そんな利己心が強くなるほど視野が狭くなり、自分のことしか見えず、以前なら絶対にやらなかったであろう言動に陥ってしまうのが、「バカ」「愚か者」とみなされてしまうゆえん。例えば、「コンビニのトイレからトイレットペーパーが盗まれた」「来客用に置かれたオフィス受付の消毒液がなくなっていた」という盗難のニュースは、利己心の強い人による愚行そのものでした。
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