「一時休業のおしらせ」――。新宿3丁目の交差点にあるラオックス新宿本店。少し奥まった入り口のガラス扉には、3月1日からの一時休業を知らせる1枚の紙が貼られていた。
しばらく様子を見ていたが、休業を知らずに訪れる客はいなかった。新宿本店がオープンしたのは2015年6月。ビルの5階から8階(総面積635坪)に商品をそろえ、「日本の『美』をコンセプトにした店舗づくり」をアピールしていた。
中国人観光客をターゲットに「ラオックス」の免税店を展開するラオックスは、2月後半から3月前半にかけて次々と店舗の閉鎖・休業を実施している。閉鎖は大阪日本橋店など6、休業は新宿本店など3(図参照)。これで2020年初に32あった国内店舗のうち、約3割が営業を停止したことになる。
店舗リストラの引き金をひいたのは新型コロナウイルス問題だ。1月27日に中国政府は国内外への団体ツアーを禁止。その影響だけでなく、個人の中国人旅行客も激減している。
免税店事業の足元の売上高は非開示だが、「事業の多角化で全体の売上高に占める免税店舗(ラオックス)の比率は数年前の”爆買い”時期からは下がっている。ただ、免税店舗の顧客の約90%は中華系ということから推し量ってほしい」(コーポレート統括本部の阿部洋介・副本部長)。
パート・アルバイト全員を雇い止め
営業を続けていても、5階から7階を閉鎖した秋葉原本店のように減床を実施した店もある。3月4日の午前、秋葉原本店の1階から4階を見て回ったが、記者のほかに客は1人だけで、手持ち無沙汰の店員ばかりが目立った。
ここ数日はマスクが入荷されるようになったため、それ目当ての客は一定程度いるという。だが、「うちはインバウンドなので、新型コロナ(の問題)が出てから厳しいです」と店員はあきらめまじりにそう口にした。
この店員の表情が晴れないのも無理はない。ラオックスは2月14日、免税店での販売職140人の希望退職を募ると発表。これとは別にラオックス店舗のパート・アルバイト全員、約300人に対し、現在の4月9日までの契約を更新しないことを通告している(対象者は休業補償を受けながら自宅待機)。
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