「弱さの情報公開」が大事だ--『男おひとりさま道』を書いた上野千鶴子氏(東京大学大学院人文社会系研究科教授)に聞く
「老後は丈夫でぽっくり、それも妻より先に」が理想とされる。だが、「想定外」が多いようだ。『おひとりさまの老後』でベストセラーをものしたジェンダー研究が専門の社会学者が、男性版の「老後をひとりで生き、死ぬ知恵」を指南する。
--身につまされるところがあります。
身につまされるということは、思いあたるところがあるということ。それはよかった。私は男ではないから、読者から見当違いだよと言われるのではないかと不安だった。男性に対する観察が間違っていなかったということで、ありがたい。
--骨子は人生の「下り坂」での生き方を学ぶ、ですね。
生き方は、学習と経験だと思う。何歳からでも学べば身に付く。
生き方や暮らし方は生活習慣であり、生活習慣というのは、関西風に言えば、クセのもん。クセは変えられる。生活習慣病にかかった人たちは生活習慣を変えて直そうとする。それと同じで、生き方や暮らし方も学習と経験で変えられる。
--「下り坂」に入る前、いつがピークと認識したらいいのでしょう。
ピークはその最中にはそれとわからない。振り返ってはじめてあれがピークだったのかというようなもの。ピークは、何かに夢中で充実していて、社会的にも家庭的にも手ごたえがあるとき。そうであれば、人生のピークは意外に早く来て早く終わるもののようだ。
ピークではなくても、年をとったいまがいちばん幸せ、ラクだという女性はたくさんいるが、男性の多くはそうではないらしい。