「弱さの情報公開」が大事だ--『男おひとりさま道』を書いた上野千鶴子氏(東京大学大学院人文社会系研究科教授)に聞く
--ご自身では。
私がこの年齢でこれからが研究者としてのピークと言えば、たんなるアホ。私のピークは過ぎた。理科系の研究者はもっとピークが早い。ピークを過ぎた研究者は教育か学内行政に転進する傾向がある。ピークが過ぎたことを自覚していればそれでいい。
-- 一般人について、雇用定年、仕事定年、人生定年、家族定年、また夫婦定年、親業定年などの節目を示されています。会社勤めでは雇用定年前後を一応のピークと考えるとわかりやすいですね。
この本で書いた定年後へのソフトランディングの成功例は、みな助走期間が長く、社内的にそれほど出世していない人たち。それが原因なのか結果なのかは、わからないが。社内の出世競争に見切りを付けたから自分の居場所をよそに求めようとしたのか、もともとそういうキャラだから出世を求めなかったのか。それをジャーナリストの福沢恵子さんは「ヨコ出世」と呼んでいる。結果として、その人たちはソフトランディングに成功している。
超高齢社会では、上り坂が過ぎてからも人生はなかなか終わらない。むしろ下り坂の期間が長く、そうは死なせてもらえない。昔のように人生のピークで枝がポキンと折れるように死ねたら苦労しないのだが。こんなに長く続く老後は、ほとんどの男性にとって想定外だろう。
--「弱者」になるという自覚が必要ですね。
「弱さの情報公開」ということが大事。これは障害者の方とお付き合いしてしみじみとわかったこと。ひとりで生きられないから弱者はつるむ。つるむときには弱音を吐かないと、誰も助けてくれない。