ピース・ウーマン ノーベル平和賞を受賞した12人の女性たち アンゲリーカ・U・ロイッター/アンネ・リュッファー著 松野泰子/上浦倫人訳~社会の偏見と闘う意味と女性の生き方を考えさせる
評者 中岡 望 ジャーナリスト
今年のノーベル平和賞を受賞したのはオバマ米大統領である。この受賞に関してアメリカ国内では賛否両論が渦巻いた。選考が政治的ではないかとの批判も聞かれた。同賞の趣旨は、国際平和、軍縮、平和交渉、健康衛生、慈善事業、環境保全などの分野で貢献をした人物、組織を顕彰するというものである。日本人では、1974年に佐藤栄作元首相が受賞している。この賞は、1901年にアンリ・デュナンとフレデリック・パシーが受賞して以来、97人と20団体が受賞している。そのうち女性の受賞者は12人である。
最初の女性受賞者は05年のオーストリア人のベルタ・フォン・ズットナーである。彼女はノーベル賞の創設者アルフレッド・ノーベルと親交があり、本書によれば「ふたりは生涯を通じてお互いを尊敬し合う」関係であった。ノーベル平和賞の目的の中に「男性または女性に贈られる賞」と書かれているが、わざわざ“女性”と書かれているのは、ノーベルがズットナーを最初の受賞者として意識していたからだといわれている。ズットナーが平和賞を受賞したのは7人目であった。
本書は最初の受賞者ズットナーから2004年に受賞したアメリカ人のワンガリ・マータイまでの12人の受賞者の評伝である。97人の全受賞者のうち女性が12人に過ぎないのは、今まで女性が置かれてきた社会的立場を象徴しているのかもしれない。あえて12人に共通する点があるとすれば、社会的なマイノリティであり、社会の偏見と闘ってきたことであろう。
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