糖尿病患者に期待の新薬、1300万人の巨大潜在市場を狙う

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 インスリンは、よく知られているように、患者自らが皮下注射する。日本では、「自分で針を刺す」ことへの抵抗感が患者側に非常に強いこともあり、医師にも「経口薬が先でインスリンは最後の手段」という考えが根強い。その結果、患者によっては高血糖が長期間続き、失明や足の壊死・切断、高血圧、腎不全といった深刻な合併症を招いてしまうことも少なくはなかった。だが早期に高血糖を抑制すれば、こうしたリスクを徹底的に抑えることができる。

これを“好機”ととらえるのが、基礎インスリンで国内シェアトップのサノフィ・アベンティス(フランス)だ。

同社で糖尿病領域のマーケティングを統括する内藤寛之氏は、「効果的なインスリンの早期利用で、日本は特異的に遅れている」と指摘する。サノフィはSU薬でもシェアが高く、インスリンでも09年6月に強化(超速効型)インスリン剤の発売を開始した。経口薬、注射薬双方の製品を持つ強みを生かし、トータルな糖尿病治療を提案していく意気込みだ。

開業医として長年、糖尿病治療に当たってきた大阪府内科医会の福田正博会長は、糖尿病薬を処方する際、(1)薬の安全性、(2)薬価が安い、(3)血糖値が確実に下がり副作用がない、の三つを念頭に処方するという。外資系を中心に開発が進む治療薬にもそれぞれ一長一短がある(下表)が、「それでも選択肢が増えることは望ましい」と話す。

たまたま時期を同じくした新薬の登場と診療方法の進展は、長く選択肢の限られたままだった日本の糖尿病治療の現場に揺さぶりをかけることになるだろう。増え続ける患者にとっても“福音”となりそうだ。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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