糖尿病患者に期待の新薬、1300万人の巨大潜在市場を狙う

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9月下旬から1週間、オーストリアのウィーンで開かれた欧州糖尿病学会。世界の糖尿病専門医など2万人が集まる会場の中で、ひときわ注目を集めた発表があった。「DPP−4阻害薬」など、「インクレチン作用系」と呼ばれる糖尿病治療薬に関する研究成果の報告だ。

糖尿病には先天的な「1型」と、生活習慣と関連が深く患者の大半を占める「2型」があるが、DPP−4阻害薬は2型向け。2006年に米メルク社が米国などで発売を開始。すでに世界85カ国以上で承認を受け、日本では09年中にもメルク社の完全子会社である万有製薬と小野薬品工業から「ジャヌビア」「グラクティブ」の商品名で発売予定だ。

糖尿病治療は生活習慣の改善を大前提とし、同時に経口薬(飲み薬)の服用、さらにはインスリン注射という治療を症状に応じて行う。患者数が年々増加している日本だが、新薬が患者に届くまでに時間がかかる、いわゆる“ドラッグラグ”は深刻。専門医もまだまだ少なく、症例に合った治療をできないことが多いなど、糖尿病に関して日本は後進国といっていい。DPP−4阻害薬の登場を一つの契機に、日本の糖尿病治療も変わろうとしている。

DPP−4阻害薬は、経口薬で現在シェアトップの「アクトス」(武田薬品工業)以来、10年ぶりの新薬。既存薬と作用機序が異なり、食前食後関係なく1日1回の服用でよいこと、高血糖時にのみ作用し、重篤な症状をもたらす低血糖や体重増加といった副作用が他の経口薬よりはるかに少ないこと、などが長所。現在も経口薬の主流である「スルホニル尿素薬(SU薬)」が効かない患者にも投与が可能だ。

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