ユニゾ、水面下で進む「踏み絵」と「資産売却」 三つどもえの買収合戦、国内初「EBO」の舞台裏

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一方の「右」は、ファンドによる買収を回避するために会社を2つに分離。ビル10棟と、浅草、横浜、名古屋駅前のホテル3棟を譲り受けて運営する総資産600億円規模の会社になるというもの。この会社は小崎社長らが運営するとされていた。

この2案を示したうえで、小崎社長は「左なら、雇用は2年間保障されるものの、ファンドの下で不自由な生活を強いられる。右なら雇用は保障されないが、縛られない自由な生活を送ることができる」と説明。そのうえで「俺の会社に来るか」と迫ったのだ。

「小崎社長についていくのか決断を迫る、まさに踏み絵だった。詳細がわからないので詳しい説明を求めたら、『あ、君は左ね。帰っていいよ』と言われた」と、ユニゾの社員は明かす。

結局、約300人の社員のうち、「右」を選んで小崎社長についていくと決めたのは100人程度だったという。

上場企業初、従業員による買収を準備 

TOBを拒否するユニゾに対し、ブラックストーン、フォートレスともにTOB価格を引き上げ、再提案が繰り返された。そうした中、「右」を選んだ社員たちに突然、お触れが出回る。「持株会を3つ作るから」との理由で、一般社員から部長クラスまでに、それぞれ10万〜80万円を出資しろと言い始めたのだ。

突然、降って湧いた持株会構想。その意図は、それから数週間後の12月22日に明らかになる。ユニゾの従業員が設立した「チトセア」が、米ファンドのローン・スターと組んで、上場企業では例がない従業員による企業買収(EBO)を実施し、会社を非公開化すると発表したからだ。

ローン・スターは東京スター銀行や目黒雅叙園などを手がけた。ちなみに買い付け価格は1株5100円で、HISによる買収提案前の株価は2000円前後で推移していた。

つまり、ブラックストーンらの提案を拒否するためにチトセアを設立、EBOを実施するために社員に踏み絵を踏ませたり、出資を募ったりしていたのだ。

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