東京五輪の舞台「有明アリーナ」の可能性と課題 近代的な施設で収益も唯一の黒字計画だが…

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その1つがアクセス面ではないか。江東区有明地域というのは、国際展示場や有明コロシアムや有明テニスの森、有明体操競技場などイベント・スポーツ施設が目白押しだが、鉄道網を利用しようと思うなら、徒歩8分のゆりかもめの「有明テニスの森駅」か「新豊洲駅」まで行くか、東京臨海高速鉄道りんかい線「国際展示場駅」まで17分も歩かなければならない。

ゆりかもめは6両編成で収容力が低く、イベントが重なればすぐに超満員になってしまう。一方のりんかい線まで行くのはやはり遠い。どちらも難点はあるのだ。

東京駅丸の内南口や門前仲町に出るバスも走っているが、前者は銀座や有楽町といった繁華街を通るために日常的に混雑していて使い勝手があまりよくない。門前仲町行きはまだ空いているが、ターミナル駅起点ではないため利用価値が高いとは言えないだろう。都内ということで、少し遠くまで歩けば別の選択肢もないことはないが、将来を見据えるとアクセス面は改善の余地がある。

有明地域が目下、開発途上で買い物や飲食のできる場所が少ないことも懸念される点だ。現時点では有明アリーナ付近にはコンビニが1軒あるだけ。スーパーマーケットは国際展示場駅まで行かなければ見当たらなかった。

こうした状況を打開すべく、今年4月には、ゆりかもめの「有明テニスの森」と「有明駅」の中間に「有明ガーデン」という203のテナントを含む大型商業施設がオープンする予定。住友不動産がすすめる再開発プロジェクトだ。

だが、それだけですべてが事足りるのかはわからない。もちろんイベント開催時には有明アリーナの内外にも飲食店が出店されるはずだが、1万5000人という人数をさばき切れるかどうかは、本格運営がスタートしてみなければわからない。この地域には東京五輪・パラの複数施設がひしめくことを念頭に置いて、来場者が快適で楽しめるような努力を地域ぐるみで払っていくべきだろう。

オリ・パラを通じて聖地になるのか

2021年6月以降の動向が気になるところだが、まずは東京五輪・パラに注目が集まる。とりわけ、女子バレーボールは1964年の前回東京大会で「東洋の魔女」が華々しい活躍を見せ、金メダルを獲得したお家芸の1つ。輝かしい歴史があるだけに、注目度は非常に高い。

中田監督も「メダルを取るために全力を注いでいく」と決意を口にしている。有明アリーナが女子バレーの新たな聖地となり、大会後は黒字モデルの理想的なレガシーになるように、まずは火の鳥ニッポンの奮闘を期待したい。

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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