IMF「消費税20%に引き上げ」提言に込めた真意 人口減少などでマクロ経済上の課題が増える

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――日銀の金融政策についてお尋ねします。最近、マイナス金利を長期間続けたことで、かえってインフレ期待を引き上げられなくなっているのではないかという指摘が出ています。現在の金融政策は適切なのでしょうか。

2019年の4条協議では、政策の持続可能性を高めつつ、日本銀行は緩和的な政策スタンスを維持すべきであるとしている。金融システムに与える副作用を相殺しつつ、より持続可能な緩和スタンスを日銀が最近強調していることは適切だと考えている。

物価の安定を達成し、国民経済の健全な発展に資すること、という日銀の目的に照らして、政策の維持可能性を高める手段を検討しつつ、日銀は長短金利目標を維持すべきだと考えている。

日本の所得格差は大きくなりつつある

――日本の人口は今後40年間に25%以上減少し、実質GDPも25%低下すると見込んでいます。

GDP全体に与える影響ほど大きくはないが、人口の高齢化が1人当たりGDPに与えるマイナス影響はあるとみている。それは、高齢化は1人当たりの労働時間を減らし、1人当たりの労働生産性も低下させるからだ。

2019年11月に来日したIMFのゲオルギエバ専務理事。IMFは日本政府に対し、消費税率の20%への引き上げを提唱した(撮影:尾形文繁)

しかし、はっきりさせておきたいのは、GDPの「水準」ないしは1人当たりGDPの「水準」が減少すると言っているわけではないことだ。われわれの計算では、人口要因によって低下するのはGDPないしは1人当たりGDPの成長率であって、減少の度合いは1人当たりGDPよりも、GDP全体のほうが大きい。

――現在20%のキャピタルゲイン課税を30%へ引き上げ、同時に富裕税を提言しています。

われわれの研究によると、ほかの先進諸国と同じく、所得格差は日本でも大きくなりつつある。そして、世代間の富の不平等も大きなものになっている。この傾向に対抗するには、より高率のキャピタルゲイン課税か、富裕税の再導入などによって再分配効果を強化することが、十分意味あることだと考えている。

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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