IMF「消費税20%に引き上げ」提言に込めた真意

人口減少などでマクロ経済上の課題が増える

――アベノミクス下での日本経済のもう1つの特徴が、企業貯蓄が大きく積み上がっていることです。このことが、家計消費が弱い一因にもなっています。

企業部門の貯蓄から投資を差し引いた「純貯蓄」は、1990年代のバブル崩壊で不動産価格が大きく低下して以降、顕著に増加した。しかし、これは家計部門と政府部門の純貯蓄の減少と相殺されている。(日本経済)全体でみて、日本の純貯蓄は過去40年間、GDP比3%程度で上下しながら推移してきた。

ポール・カシン(Paul Cashin)/オーストラリア出身。エール大学で経済学博士号を取得。1993年にIMFに入り、調査部門を皮切りに、中東・中央アジア局などでヨルダンやインドの調査チーフを務める。2013年3月からIMFアジア太平洋局のアシスタントディレクターを務める(写真:IMF)

われわれが調査中の研究によると、企業部門の貯蓄の積み上がりにはいくつかの原因がある。主なものに、バブル崩壊以降の低金利によって生じた企業のデレバレッジと関連して、資産収入が増えていることがある。さらに、より賃金の低い非正規労働者の雇用が拡大することに伴う、労働分配率の低下も寄与している。

賃金上昇を促すいくつかの政策対応が考えられるが、優先度が高いのは、非正規労働者の職業訓練の機会を増やすことで、これは生産性と賃金を高める。(最低賃金の引き上げなどの)所得政策も賃金上昇を促すだろう。

最低賃金や公務員賃金の引き上げが重要

――過去5年程度の4条協議後の声明文をみると、以前は所得政策への言及が目立っていました。2019年は所得政策への言及が弱くなっている印象があります。

2019年の4条協議の報告では、まず賃上げをした企業に対する、さらなる税制優遇のほか、最低賃金の引き上げや公務員や公的団体の賃金と社会給付の引き上げ、低所得世帯を保護しつつ、公共料金の価格決定においてコストを反映させることなどを推奨した。

さらに、保育や介護分野における労働者の賃金引き上げも求めている。こうした政策は名目賃金と物価を上昇させるだろう。

――最低賃金や公務員賃金について、どこまで引き上げるべきという具体的な金額はあるのですか。

最低賃金の具体的な数値はない。公務員の賃金についても(いくら引き上げるべきだという)特定の数字はない。

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