「インフル特効薬」急落で塩野義が迎える正念場 「ゾフルーザ」を耐性ウイルス問題が直撃

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ところが、ゾフルーザの今期売上高は第3四半期までで前期比96%減、通期でも同32%減予想という急落ぶり。要因の1つは「昨シーズンから残っていた流通在庫の影響が大きい」と塩野義は説明する。

確かに昨シーズンのインフルエンザは2018年12月から2019年1月にかけて流行した。ゾフルーザの処方が急増していたこともあり、医療機関は品切れにならないようゾフルーザの在庫を多めに積んだ。だが2019年1月末に流行は早くも収束に向かい、結果としてゾフルーザの在庫が多い状態から今シーズンがスタートすることとなった。インフルエンザ患者の今シーズンの流行が始まっても、塩野義からの新たな出荷は多くなかった。

浮上する「耐性ウイルス」への懸念

そうした事情はあるものの、インフル薬市場におけるゾフルーザのシェア低下はあまりに激しい。2018年10~12月に47%あったゾフルーザのシェアは、2019年10~12月には11%まで急激に落ち込んでしまったのだ。

背景にあるのは、耐性ウイルスへの懸念だ。

耐性ウイルスとは、薬がターゲットとするウイルスが変異し、薬に対する抵抗力を持ってしまうこと。そうなると、その薬が効きづらくなってしまう。実は、ゾフルーザは臨床試験の段階から比較的高い割合で耐性ウイルスが出現することがわかっていた。とくに12歳未満の小児で出現率が高かった。

この治験データは当初それほど注目されなかったが、2019年3月に国立感染症研究所が発表した調査結果でも、ゾフルーザはほかのインフル薬より高い率で耐性ウイルスが出現していた。さらに同年10月には、その耐性ウイルスがヒトからヒトへ感染していくことも指摘された。

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