田嶋陽子が斬る!「男手放しても職手放すな」 女性は今の時代をどう生き抜けばいいか
お父さんのほうに行かないからかわいくない、と感じるのは、お父さんが時間を使っていないからですよ。子どもがなつくかどうかは、親がどれだけ子どものために時間を使ったかで決まる。お母さんが時間を使っているから、子どもはお母さんのほうへ行く。でも、男の人だって母性がある。鍛えられていないから出てこないだけです。
私は「日本での結婚は奴隷制度」と言っています。女は家庭でタダ働きでしょう。でも、今の女性たちが家事シェアを夫に求められるとしたら、仕事を持っているからですよ。専業主婦だったら、「それは女の仕事だろ」と言われて終わりです。働いているから文句を言えるというのは、とても大事なことです。
家事を全部押し付けられた女は、勉強したり、自分が楽しいことをしたり、子どもとつき合う時間がなくなってしまいます。だけど、日本の男は妻に全部やらせて平気で、自分はテレビを見ているとか、本を読むとか、仕事の準備をするでしょう。対等な人間のはずなのに、そんなふうにできる男の人の鈍感さが信じられないです。日本ではまだ「女だから」「男だから」という考え方が抜けていません。
老後が寂しいとかそういう気持ちはない
――一方で、子どもを持たない人もいます。子どもを持たない人生の幸せは、どこにあるのでしょうか?
私は親との関係がよくなくて、相当母親に痛めつけられたから、絶対自分が子どもを持つと同じことをすると思ったんです。『愛という名の支配』を書いて私は解放されたけど、それでも大学で教えていたときに、ふと母親が自分の中に出てきて威圧的になっていることに気づくときがありました。
人は悪いことからも学ぶから、いじめられた人は、似たようなやり方で人をいじめ返すんです。でも、いじめている人も苦しい。そういうことを体験したくなかったから、私は子どもを持ちませんでした。
母親は男社会の代理人で、良妻賢母であればあるほど、娘を男社会に適応させようとものすごく努力するわけ。誰でも言うように、女は「小さく小さく女になあれ」、と「女」に作られる。そこに抵抗なく従った人は、良妻賢母になって夫に尽くして企業社会に適応していくけど、私みたいに最初からとんがっていると、「そんな不自由はやだな」と抵抗するから、親は余計に抑圧をかけるんです。
子どもがいないことが当たり前なので、私は老後が寂しいとかそういう気持ちは全然ないです。私はすごく強欲なのか、自分の時間はすべて自分で使いたいみたいなところがあるから、1人でいて寂しいとかいう感情は一切ありません。ただ、もし一緒にいた恋人がいなくなったり、親を亡くしたばかりの人は、寂しいでしょうね。
――田嶋先生が結婚しなかったのはなぜですか?
何度か結婚しようと思ったことはありました。研究のためにイギリスへ行っていたときにできた恋人とも、結婚しようという話になりました。彼はアーティストだから世界中どこへ行ってもアーティスト。
でも、私は日本人の英文学者だから、イギリスの大学で英文学は教えられない。当時私は法政大学の教授だったけど、イギリスで暮らしたら語学学校の先生になるしかなかった。私は最後まで自立を考えていたから、彼と結婚することはできませんでした。
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