期待されて異動した若手社員が酷評された理由 求められる仕事を本人に明示しない組織の罪

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念願かなって希望する部署に異動したものの思わぬ落とし穴にはまってしまった若手社員のエピソードを紹介します(写真:kikuo/PIXTA)
新年度を控え、社内で人事異動の話題が出てくる季節。この記事を読んでいる方の中にも異動を希望している人はいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、念願かなって希望する部署に移ってみたものの、思わぬ落とし穴にはまってしまったというケースは少なくありません。その落とし穴の1つが、異動前と異動後の部署の評価基準の違いです。多くの会社で見られる、評価の問題点について『小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方』の著書がある山元浩二氏が、生々しいエピソードとともに解説します。

入社以来アピールし続けてようやく異動が実現

島村良太(仮名)は、かねてから希望を出し続けていた異動が決まり、意気込んでいた。いよいよ、この4月から会社の中でも精鋭が集まると噂され、他部門から羨望の目で見られるマーケティング部門へ行けることになったのだ。

島村はこの日を待ち望んでいた。新卒で入社した島村は総務部へ配属となった。当初の希望がかなわず落胆もしたものの、考えを改め、販促や集客に関する書籍を読みあさり、休日にもセミナーに自腹で費用を出して参加し、いつマーケティング部に行ってもいいように知識を蓄え備えていた。直属の上司やマーケティング部のマネージャーにもアピールをしてきた。

同時に、与えられた仕事も懸命にこなしていた。今いる総務で認められなければ、精鋭部隊のマーケティングに移動することなどかなわないからだ。

上司から指示されたデータのとりまとめや調査などを要求どおりに行い、資料はスピーディーに作成、ミスはなく、完璧な作業が行えるよう努めた。その結果、入社以来3年間継続して、同僚の中ではトップの評価結果を獲得することができたのだ。

マーケティング部に行って当初担当した業務は、膨大な顧客情報やその購買データ、商品ごとの売れ行きなどを集約、整理する業務だった。

上司から指定されたフォームにデータをまとめ、現状分析の結果を報告するための資料づくり。島村がこうして作成した分析結果に基づいて集客のための広告や販促活動をほかの担当者が計画、実行、効果測定を行い、そのデータが島村のもとに集約されてきて次のデータ分析に活用されるという役割だった。

来る日も来る日も島村はエクセルと向き合う毎日が続いた。システムから吐き出されたデータを決められたフォームにコピー&ペーストし、上司が見やすいようにレイアウトを整え、印刷設定をするという作業の繰り返しだった。

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