「辞める」「独立する」は逃避
日常生活はつねにストレスと隣り合わせです。
取引先に怒られ持ち帰って上司に相談すると、今度は上司に怒られ、また取引先に持っていかなければならない。泣きたくなります。あるいは上司の指示どおりの仕事をしたはずなのに、言った言わないの話になって、結局、やり直す。部下に仕事の指示を出したはずなのに、思うような中身が上がってこないで時間切れになり、結局、自分でやる。
よくある仕事の悩みです。仕事の悩みというより人間関係の悩みです。悩んで悩み倒して行き詰まって、どうにもならなくなって周りに相談する。このようなとき「そんな会社辞めちゃいなよ」とか、「思い切って独立しちゃえば」とか、平気で言う人が時々います。
視野を広げる、あるいはその悩みをもっと広い次元で相対化するという意味合いで言ったのかもしれませんが、それを真に受けて本当に独立したりすると、十中八九、後悔します。大抵の場合、サラリーマンのほうがノマドや起業家よりずっと楽です。独立したら、顧客との関係ひとつとっても、上司がいない分、顧客に直接向き合うことになるわけですから当たり前です。人間関係の悩みを抱えていた人にとって、ストレスの量はたぶん増えます。要するに、小さい自由を捕まえようとして、結果的に大きな不自由にさらされます。
あるいはこんなアドバイスをする人もいます。ルールに縛られてがんじがらめになっている人に対して、「ルールなんて納得できなければ無視すればいいんだよ」とか、「ルールなんて破ればいいんだよ」と。
とても勇ましく聞こえますが、本当に破ると、そのコミュニティの中で抹殺される場合が多いのです。「それでいいじゃないか」と畳みかけられそうですが、当事者のストレスはさらに蓄積され、結局、問題解決に向かわない場合が多いと思います。
独立しろとかルールに従うなと言うのは、言っている自分に酔いがちだし、格好よさげな響きもありますが、いずれもストレスや悩みを正面から受けないで、どちらかというと逃げる勧めだと感じます。自由すぎる無責任な意見で、誰もがルールを破ったり独立できれば、苦労はありません。もっと言えば現状逃避的ですし、何より逃げクセがつきます。野党的になります。与えられた環境の中で、逃げないで悩みやストレスに立ち向かうこと。それが世の中の多くの人に求められる覚悟であり、現実だと思います。
今の環境から逃げないで、歯を食いしばって立ち向かう凡人のためのストレスマネジメント。そんなことを凡人(私)の経験を通して、さらに考えていきたいと思います。
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