新型肺炎で外出できない「中国人」が頼る離れ業 一度ほぼ撤退した「無人化」が再脚光浴びる

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することがなくなった陳さんは、8日から「封鎖日記」と題する日記をつけ始めた。そこに記されたある日の記録はこうなっている。

9時:起床
9時~10時:ご飯
10時~11時:パソコンの中身の整理やネットサーフィン
11時~12時:求人情報を見る
12時~14時:部屋で運動
14時~15時:掃除
15時~16時:昼寝
16時~18時:炊事と晩ご飯
18時~20時:お風呂
20時~22時:資料などの整理、ネットサーフィン

「新型肺炎の発生前は北京市内のジムに通っていましたが、ジムのあるエリアで感染者が出て、一帯が閉鎖されてしまいました。今はダンス動画を見ながら、ズンバのリズムに合わせて40分ワンセットで体を動かしています」

そう話す陳さんは、たっぷり運動をして、入浴にも2時間かけている。友人たちの間で、食事は「出前派」と「自炊派」に分かれているが、陳さんは後者。自宅に戻る日の7日、当面外出できないと覚悟して食材をまとめ買いした。

普段作らないような手の込んだ料理を作って楽しんでいるが、省力化とダイエットのため、食事は1日2回。「私はもともと1人が好きで、日頃できないことを存分にやっていますが、ストレスをためている友達も多いです」と言う。

急速に普及する無接触サービス

陳さんは先週インターネットで注文した3000円の電子マスクが手に入るまでは、とことん籠城するつもりでいるという。だが、自宅周辺のエリアでは外出制限はそれほど厳しくなく、散歩を始める友人も出てきた。とは言え、散歩に出ている人たちも「マスクをして、人のいない場所を歩く」ことは守っているという。

2月12日の北京市内の光景。買い物で並ぶときにも前後の人と距離を置くことが求められている(筆者友人提供)

先に紹介した大連の工場では当初、「昼食時には人と向かい合わずに座り、私語厳禁」というルールを策定したが、従業員のストレスと感染リスクの両方を軽減するため、昼食を取らずに退社するか、昼食を家で食べてから出社する時短勤務を導入するように改めた。

感染リスクを極力減らしながらストレスの少ない生活を送る方法に皆が知恵をめぐらす中、バズワード(流行語)になっているのが「無接触サービス」と「無人化」だ。

無接触サービスを説明するビザ宅配店の広告(筆者友人提供)

市民生活のためにサービスの維持を求められる一方で、従業員の健康も守らないといけない「食」に関わる企業の間で、無接触配送サービスは新たなスタンダードになりつつある。

例えば出前アプリ大手の美団(メイトゥアン)や餓了麼(ウーラマ)、中国EC最大手のアリババが運営するネットスーパー盒馬鮮生(フーマーシャンシェン)は、配送員とユーザーが商品の受け渡し場所を決め、配送員が指定位置に置いてその場を離れた後、ユーザーに取りに来てもらう方式を取っている。

ケンタッキーフライドチキンが1月末に始めた無接触配送サービスは、配送員がマスクやヘルメットで全身を覆い、さらに消毒したうえで、商品を指定の場所まで運ぶ。注文した客が近づくと、配送員は手で制止し、飛沫が飛んでこない場所まで後退する。異様さとコミカルさが漂う、商品の受け渡しシーンは、メディアやSNSで大きな話題になっている。

中国の店舗の半数を休業しているバーガーキングも、2月8日に運営している店舗で無接触配達サービスを始めた。ほかにも、スターバックスコーヒーが店内に設置した無人の商品受け取りスペースや、生鮮野菜EC企業による宅配ロッカーに商品を届ける取り組みも人気を集めている。

次ページ一度は失敗の烙印を押された無人サービス
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