相次ぐ業績の修正、遠ざかる「工作機械」底入れ ファナックは利益半減、貿易摩擦影響長引く

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では、2020年の工作機械業界はどうなるのか。日工会の飯村会長は「受注は前半に底を打ち、緩やかに反転していく」とし、2020年の工作機械受注額予想を2019年比で微減の1兆2000億円と発表した。

業界内では「今のままでは届かないが、後半に反転するならいい数字」(ヤマザキマザックの山崎智久会長)と、2020年中の回復を見込む声が多い。「ボリュームは大きくないが、半導体や5G関連が動いているという話は聞いている」(ファナック山口社長)と、一部ではすでに半導体や5G関連の案件が出ている。

2020年後半に受注は上向く?

関連製品を含めると受注全体の6割を占めるとされる自動車向けについても、「(自動車関連メーカーからは)2021年の稼働開始の案件が多いので、2020年半ばくらいには投資があるという感触がある」(飯村会長)と、2020年後半以降に受注が上向くという見方が強い。アメリカ製品の対中輸出の増加、制裁関税の緩和など「第一段階の合意」が1月に結ばれたことを受け、中国で新エネルギー車向けを中心に回復を期待する声もあがる。

ただ、ある業界関係者は「米中貿易摩擦のように地政学的リスクがあるので2020年の予想は難しい。突発的な要因で買い控えが起きることもある」と不安を見せた。通常の景気サイクルから読み切れなかった2019年の受注の動きを見ても、先行きは楽観視できない。

そこに降って湧いたように起きたのが、新型肺炎の影響だ。工作機械の顧客企業は中国工場の稼働再開延長を余儀なくされているうえに、サプライチェーンの混乱や設備投資マインドのさらなる悪化が懸念されている。ファナックの山口社長は「コロナ(ウイルスによる新型肺炎)の状況がどう進むかもわからないが、春節が実質的に長引くという話もあるので今後注視する必要がある」と警戒姿勢を示した。

もっとも中長期的に市場が拡大するという見方は変わらない。生産ラインの自動化・省人化ニーズは根強く、ある工作機械大手幹部は「顧客と話すと労働力不足の様子はひしひしと感じられる。市場のポテンシャルはある」と話す。

今回はリーマンショック時のような急激な落ち込みと比べると緩やかな減少で、各社は在庫の調整や増強投資を先送りするなどの対応を進めている。成長路線へ戻るまで、しばらく忍耐の時期が続きそうだ。

田中 理瑛 東洋経済 記者

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たなか りえ / Rie Tanaka

北海道生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。報道部、『会社四季報』編集部を経て、現在は会社四季報オンライン編集部。食品業界を担当。以前の担当は工作機械・産業用ロボット、ドローン、医療機器など。趣味は東洋武術。

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