日経平均株価の「高値更新の舞台」は整った 「財政出動」「金融緩和」の流れは止まらない

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しかし、5日の6日の上げで空けた日経平均の2つのマドは強い上昇シグナルとして信じて良いと筆者は考える。つまり、引け値ベースのマド埋め(①2万3084円、②2万3319円を下回ること)の可能性は小さいと思っている。新型肺炎もまだ完全にはピークが見えない状態だが、チャートのシグナルはアベノミクス相場「過去4回」(①2018年1月23日、2万4129円、②2018年10月2日、2万4448円、③2019年12月17日、2万4091円、④2020年1月17 日、2万4115円)に渡り跳ね返された高値抜けへ、5度目の「高値挑戦権」を得たことを示唆している。多くの投資家が見たことのない、1991年以来、約29年ぶりの相場の景色は目の前に迫っていると、筆者には感じられる。

「外国人次第」の構図はまだ変わっていない

その考えを支えるのが世界的財政出動・量的緩和政策の継続だ。新型肺炎の景気対策で、世界規模で拡大する財政出動。中国は1兆2000億元(約18兆8000憶円)の資金供給。2018年2.5%、2019年1.3%と経済成長率が低迷するロシアは、新型肺炎の影響で原油価格が下落基調で窮地に陥っており、プーチン政権維持のため2021年に2%台後半の成長を目標に26兆ルーブル(45兆円)の財政出動を表明した。

また景気対策に成功したFRBも、利下げ停止とバランスシート縮小を再び検討するという出口論が出ていたが雲散霧消し、量的緩和政策の継続の方向だ。中国の危機感は最高潮に達している。第13期全国人民代表大会は3月5日の予定で、権威を世界に示す習近平国家主席の国賓としての訪日も4月上旬に控える。「何でもありの政策」で対応するだろう。

大幅下落で2万3000円を割れた1月30日を含む1月第4週の投資主体別売買動向を見ると、個人投資家は、現物先物合計で3164億円の買い越しだった。賢明な個人投資家はしっかり「突っ込み買い」を実践したようだ。

令和2年は日経平均451円安の大発会で始まり、波乱の1カ月だったが、個人投資家の買い越し額(現物・信用)は6663億円となり、いよいよ動き出した気配が感じられる。しかし外国人投資家は、この間現物先物を合わせ1兆5775億円の売り越しで、下値は日銀ETF買い702億円を6回、事業法人買い(主に自己株)3965億円に支えられているが、上値も重い原因がここにある。29年ぶりの高値を抜くには、やはり外国人投資家次第ということはまだ変わっていない。

一方で GPIF (年金積立金管理運用独立行政法人)の10~12月の運用実績も発表されたが、7兆3613億円の黒字で、2019年末の資産残高は168兆9897億円となっている。1948年前後3年生まれのいわゆる団塊世代800万人が60歳を迎えた時、その残高は120兆円で、65歳の時に残高は100兆円を切って年金支給は危機的な状態になると、まことしやかに言われていた。しかしその後の株式比率等の運用改革で、残高は逆に増えている。これからも株価を意識した政策を取らざるを得ないだろう。

さて今週は、火曜日に建国記念の日の休場が入り、週前半は動きにくい。だが、後半には1月小売売上高、1月鉱工業生産指数・設備稼働率、2月ミシガン大学消費者態度指数速報値と、アメリカの1~2月の景気指標が出て来る。始まった大統領選はますます熱を帯びてくるだろう。そして週末はオプションSQ(特別清算指数)算出日だ。5度目の高値挑戦の舞台は整った。ゆっくり待とうではないか。

平野 憲一 ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト

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ひらの けんいち

日本証券アナリスト協会検定会員。株一筋約45年。歴史を今に生かすことのできる「貴重なストラテジスト」として、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌への出演や寄稿記事多数。的確な予想で知られ、個人投資家の間には熱烈な「平野ファン」がいることでも有名。1970年に立花証券入社以来、個人営業、法人営業、株ディーラーを経て、2000年情報企画部長マーケットアナリストとして、投資家や各メディアに対してマーケット情報発信をスタート。2006年執行役員、2012年顧問就任。2014年に個人事務所ケイ・アセット代表。独立後も、丁寧でわかりやすい解説を目指す。

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