緊急避妊薬は、諸外国ですでに市販もされている。オンライン診療は、市販化が実現していないわが国における救済策でもある。希望する人の事情は、仕事で多忙であったり、プライバシーを気にしたりとさまざまだ。オンライン診療を実質的に制限する指針が、本当に患者に利するためのものとは思えない(なお、行政による「指針」「ガイドライン」は、民主的な手続きを踏んで定められたものでない以上、法的拘束力はない)。
ちなみに、ナビタスクリニックでのオンライン診療が今のところ特定の診療内容に集中しているのには、まったく別の理由もある。実は、主要ターミナル駅のエキナカという好立地のせいだ。先日も、慢性疾患で定期的に通院されている患者さんに、オンライン診療を勧めてみたが、当院は通勤途中に立ち寄れるから対面診療で問題ないと言う。そういう患者さんが何人もいた。
一般に医療機関の診療時間は、平日の日中だ。会社に毎日通勤しているビジネスパーソンにとって、待ち時間まで含めるとその時間帯の受診は現実的でない。そこで通勤や通学の途中に立ち寄れる“コンビニクリニック”として、ナビタスクリニックは誕生した。各院ともターミナル駅のエキナカに立地し、平日夜9時まで診療を行う。患者さんの利便性を追求した結果、都市部に通勤・通学する“医療難民”の人々をすくい上げることに成功している。
在宅勤務とオンライン診療を普及させるべき
ところが、感染症の拡大阻止を目的とするなら話は大きく違ってくる。人々が密室でひしめきあう都心の朝夕の通勤・通学列車は、効率的に感染者を作り、運んで拡散させる。本気で感染拡大を阻止するなら、勤務形態を在宅でのテレワークに一斉に切り替え、学校は自宅学習とするしかない。
実際、中国の金融センターである香港と上海では、新型コロナウイルスの感染拡大により、「在宅勤務は『してもよいもの』から『しなければならないもの』に変貌」した。「大規規模な在宅勤務の実験をする良い機会」だと『Bloomberg』は伝えている。
東京都が約2400社を対象に実施した調査では、東京パラ五輪期間中にテレワークを検討している企業が44%に上ったと報じられた(1月27日、時事ドットコムニュース)。今回の新型肺炎で、その“予行演習”に踏み切った企業もある。
だが、感染症対策に在宅ワークを導入しても、軽症患者が医療機関に押しかけ、ほかの病気で受診している人に感染させ、自宅に持ち帰ってしまう状況では意味がない。在宅ワークとオンライン診療の両者が足並みそろえて広く普及してこそ、感染症拡大の阻止という目的も果たされる。
わが国は、今回のピンチをうまくチャンスに変えられるだろうか。何をやめて何をすべきかの判断は、国民や患者の目線になれば難しいことではない。
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