グーグル支配の今は、「ネットの石器時代」 グーグルに局地戦で挑む、日本発ベンチャー企業

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グーグルの支配が社会の進化を止める

――グーグルに挑戦する人というのはあまり出てきませんね。

グーグルは若い起業家にとって、やる気をそぐ原因にもなっていると思います。あれだけ無料でいろんなサービスをやって、すでに多くの人に使われていますから。それに、検索エンジンは公共財のようなもので、それ自体は売り物にならないのです。「検索エンジンを買いたい」という人はいませんよね。みんなは検索エンジンを使って作られたサービスやソリューションを使いたいのです。

しかし、グーグルに限らずですが、この一極支配の状況は社会の進化を止めてしまいます。どんな業種でもそうですが、さまざまな味わいのある企業が競い合うべき。グローバル対応しているグーグルがいて、アイデアがすごいマーズがいて、もっとほかにもユニークな企業・サービスがあって、ユーザーがその中から選択できるのがいいと思います。逆にライバルがいなくてかわいそうですよね。日本のBtoB市場ではうち(マーズフラッグ)だけがグーグルに挑戦状をたたき付けているだけです。

グーグルは、ITテクノロジストが会社を興こして初めて大成功したケースで、僕も含め、その後に若いテクノロジストの起業家が生まれたという意味では、価値がありました。「サーゲイ・ブリンにできたなら、僕でもできる」と思えました。もしIBMが支援したマイクロソフトがグーグルに勝っていたら、「テクノロジーベンチャーってなんなの」って話になっていましたから。

グーグルに挑戦する人が少ないことの一因は、検索エンジンを作るのはものすごく難しいということです。求められるプログラミングの技術的要素が多岐にわたり、どこから手をつけたらいいかわからないのです。それこそ、世界中のプログラミング技術のいいとこ取りをして作るようなところがありますから。

世界中の何万台ものサーバーを動かすプログラムを書かないといけない。クローラーや障害検知システムを作らないといけない。いろんな国の言葉に対応するための自然言語の知識も必要。意味解析を自動で行うシステムも開発しなければならない。サーバーが故障したらどう直すのか。いろんなことに悩んでいると、「やっぱりグーグルには勝てない」となるのです。

しかし、グーグルの技術だってそこまで進んでないので、理想型を実現する技術や特許が出てくれば大きなおカネが動いて、一気にひっくり返すでしょう。本当はヤフーがそれをやればいいんですけどね、おカネも体力もありますから。「ヤフーってなに」という本質的なところに帰って頑張ってほしいです。もしジョブズが生きていたら、すでになにか仕掛けていたと思いますよ。

「うちはグーグルよりもいい検索エンジンが登場する未来の、さらに一歩先の未来に投資をしています」と武井社長
次ページでは、理想の検索エンジンとは?
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