台湾海峡と香港をめぐる「米中関係」と日本外交 中国からの圧力とアメリカの支援の「板挟み」

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1月11日の台湾総統選挙で再選され、集まった支持者にこたえる民進党の蔡英文総統(写真:共同通信)
香港区議会議員選挙での民主派の大勝、台湾の蔡英文総統の史上最高得票の再選。中国の圧力とアメリカの支援の板挟みの両地域で起きているうねりに、米中両国はどう対応するのか。そして日本外交の課題は。

香港の区議会議員選挙は、昨年11月24日に投票が行われ、民主派の歴史的な圧勝に終わった。投票率は史上最高の71%に跳ね上がり(前回は47%)、住民の直接選挙で選ばれた479議席のうち、民主派は57.34%の得票で388議席を獲得し、体制派(親中派)は、41.82%の得票で62議席に激減した。前回の選挙で体制派議員は7割近くを占めていたが、議員の比率は完全に逆転した。投票率が上がって前回と全く逆の結果が出たのである。

区議会は小選挙区制のため、得票数に比べて議席数の変化のほうが大きく出てしまう傾向があるが、反対運動が長期化するなか、同選挙は、「逃亡犯条例」への反対運動に端を発した大規模な民主化運動を、香港住民がどこまで支持しているかを計る住民投票のような役割を果たした。香港住民の多数は、暴力的になった反対運動よりも、その状況をもたらした香港特別行政区政府と香港警察の責任のほうが重いという判断を下したのである。

台湾の蔡英文総統が逆転大勝利

バトンは台湾に渡された。台湾の蔡英文総統は、今年1月11日の総統選挙で約817万票(得票率57.1%)を獲得し、中国国民党(国民党)の韓国瑜候補(約552万票、38.6%)を264万票あまりの差で退けた。得票数はこれまでの総統選挙で最高であり、1期目に得た票に約128万票も積み増して圧勝した。立法委員選挙も与党・民主進歩党(民進党)から61人が当選して過半数を獲得した(定数113、国民党は38議席を獲得)。14カ月前の地方選挙で惨敗したことを考慮すると、まさに逆転大勝利である。台湾でも、投票率が4年前と比べ9ポイントも上昇し、74.9%を記録した。

本記事は『外交』Vol.59(2月1日発売)より一部を転載しています(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

「昨日の香港は明日の台湾」という言葉が表すように、香港情勢の悪化は台湾住民の危機感をかき立てた。台湾の選挙動向は香港住民の関心の的となった。蔡英文の支持を拡大させたことは、ほぼ間違いないと言っていい。

なぜ中国への反発がこれほどまで強まっているのであろうか。それは、習近平政権が、自らの将来ビジョンを香港と台湾にごり押ししたことに対して、現地での反発が強まり、ちょっとした火種が燎原の火のごとく広がったためである。

習近平政権には、2012年の成立以来まともな成果がない。選挙で選ばれていない中国共産党政権は、改革開放政策以来、経済発展と生活向上という「業績による正統性」に依存してきた。

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