日本企業が知るべきイギリス離脱後の焦点

ジョンソン首相の「脅し戦術」は通用するか

ジョンソン首相がこれからのさまざまな交渉でどんな態度で臨むのか(写真::新華社/ニューズコム/共同通信イメージズ)

「この国のすべての潜在力を解き放つ。新時代の夜明けだ」。1月31日、イギリスのジョンソン首相はそう高らかに宣言し、EU(欧州連合)からの離脱を自ら“祝福”した。

2月3日には、これから始まるEUとの新たなFTA(自由貿易協定)交渉について、「EUルールの受け入れを含む必要はない」と断言。EUがイギリスに同じ規則やルールを押しつけようとするなら、交渉打ち切りも辞さない構えを示した。アメリカのトランプ大統領と同様の「ディール(脅し)戦術」で、EUの譲歩を引き出す狙いがある。

これに対しEU側も強硬姿勢を崩さない。EUの内閣に当たる欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、「われわれは経験から『光栄ある孤立』(19世紀にイギリスがとった外交政策)に強さはないと学んだ。われわれの連合にこそ強さがある」と、イギリスのEU離脱を批判。

今後の交渉で、「人の移動の自由を打ち切るなら、資本や物品、サービスの移動の自由もない。環境、労働、税制、政府補助金に関する公平な競争条件が維持されなければ、世界最大の単一市場(であるEU)への質の高いアクセスは実現しない」とクギを刺す。

今後を見通す5つのポイント

2016年6月の国民投票で離脱を決めてから3年7カ月。紆余曲折を経てようやく実現したEU離脱だが、イギリスとEUはすでに新たな将来関係をめぐって激しい火花を散らしている。さらにイギリスは、日本やアメリカなど第三国とも並行して新FTA交渉を始める。こうした交渉の行方は、イギリスとの輸出入や欧州におけるサプライチェーン戦略など日本企業の経営をも大きく左右しかねない。

そこで、①イギリスとEUの交渉スケジュール、②交渉の争点、③交渉のシナリオ、④日本とイギリスとの新たなFTA交渉、⑤日本企業に与える影響、という5つに分けて展望してみたい。

第1のポイントであるイギリスとEUとの交渉スケジュール。これまでの交渉では、最優先課題の3つ(市民の権利保障、イギリスのEU債務の清算、北アイルランドの国境問題)が協議され、「離脱協定」として合意・批准された。あわせて、イギリスとEUの将来関係の大枠を定めた「政治宣言」も採択された。

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