日本企業が知るべきイギリス離脱後の焦点 ジョンソン首相の「脅し戦術」は通用するか

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離脱後の今後は、政治宣言をたたき台として、イギリスとEUとの「将来関係協定」が交渉される。その範囲は物品、サービス、投資、金融サービス、デジタル、知的所有権、漁業などの「経済パートナーシップ」のほか、犯罪・テロ対策、防衛などの「安全保障パートナーシップ」など幅広い。とくに注目される経済パートナーシップについては、これまでの「単一市場・関税同盟」に代わる新たなFTAをめぐって交渉が行われる。

将来関係交渉のために設定されているのが「移行期間」だ。期限は2020年末まで。その間、イギリスはEUの単一市場と関税同盟にとどまり続ける。つまり、「完全な離脱」となるのは、激変緩和措置である移行期間が終了したときだ。

交渉にあたって、EUでは2月25日のEU閣僚理事会で基本方針が決定され、それが欧州委員会のバルニエ首席交渉官が交渉する際の指針となる。正式な交渉開始は3月初めとなりそうだ。

次の節目が2020年6月末。それまでに移行期間の延長の是非を判断する必要がある。2021年末または2022年末まで1度だけ延長できる。イギリス側は断固延長しない方針だが、いざとなったら法改正で延長は可能だ。移行期間を延長しなければ、期限の今年末までに交渉をまとめる必要がある。新たな将来関係で合意・批准できれば、2021年1月から発効する。 

最大の争点は「公平な競争条件」

第2のポイントは、交渉の争点。イギリスが目指すのは、関税や数量規制、通関手続きはできるだけゼロのまま、独自に規制や税制、ルールを決めたり、移民を制限したりできるようにすること。自由貿易を維持しながら「主権の回復」を実現することだ。

EUはイギリスが規制緩和や減税で競争力を強化し、「テムズ川のシンガポール」になることを警戒している(写真はロンドンのテムズ川)(記者撮影)

一方、EUは単一市場を構成する「ヒト、モノ、サービス、資本の自由移動」は不可分であり、ヒトの自由移動だけを分離するのは認められないとの立場だ。

また、イギリスとの地理的な近さや経済相互依存関係の深さを踏まえ、「離脱後のイギリスが製品規格や税制、補助金制度などをEUルールから乖離させ、過度に高い競争力を得ようとすることを認めたくない」(吉田健一郎・みずほ総合研究所欧米調査部上席主任エコノミスト)。

そのため、最大の争点は「公平な競争条件(レベル・プレイング・フィールド)」となるのは間違いない。つまり、政治宣言で掲げた政府補助金、独占禁止法、社会・雇用規制、環境基準、気候変動、税制などの「公平な競争条件」を、どこまで関税撤廃などFTAの中身と連動させるかだ。

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