ヤマダと大塚家具、「相乗り店舗」開始の内幕 東京と大阪の店舗で家具と家電をセット提案
1つは、大塚家具のブランドを活用した提案がうまく機能するかどうか、検証する時間が必要だったからだ。2019年7月には、群馬県前橋市で大塚家具と初のコラボ店をオープンした。高機能テレビの前に高級ソファーをセットして、電灯や絨毯などを含めた一体感あるシーンを演出した。大塚家具から、営業経験のある社員も受け入れた。
「高級家具を売るノウハウを持つ大塚家具のスタッフが、顧客にさまざまな生活シーンを見てもらいながら商品提案をする。この形がうまくいくかどうか時間をかけて見極めた。会長の山田や社長の三嶋恒夫、そしてインテリア事業部が繰り返し検証を重ねた結果、この方向でいける、と手応えを感じた」(岡本取締役)という。
ブランドを傷つけないタイミング
出資までに時間を要したもう1つの理由は、買収価格の問題だ。2019年2月時点での大塚家具の株価は1株400円前後。買収を決めた2019年11月には150円台に下落しており、株式の公開買い付けは1株145円で実施された。
業界内では「(大塚家具が)倒産してからの方が安かったのではないか」との見方もある。現に、大塚家具がスポンサー探しに奔走していた過程では、「民事再生法を申請した後であれば(大塚家具との)資本提携もやぶさかではない、という企業もあった」と、ヤマダのある関係者は明かす。
だが、ヤマダにとってそれでは意味がなかった。「民事再生を届けると、ブランド価値が落ちてしまう。当社の財務を悪化させず、かつ、大塚家具のブランドも傷つけない、ギリギリのタイミングを狙った」と岡本取締役は打ち明ける。
ヤマダ側には「時間を買う」という意図も大きかった。家具やインテリア雑貨の品ぞろえを強化するため、ヤマダはSPA(製造小売)方式により自社で商品の企画・製造も始めている。しかし、「中級クラスの家具を製造できるようになるまで3年、大塚家具で扱うような高級家具を作るには10年はかかる。(買収費用の)43億円は、時間の購入代金だ」(岡本取締役)。