ところで、フィットが属する国内コンパクトカー市場は、2018年度登録車全体市場286万台の39%にあたる112万台と寡占状態に近い。これは人気のミニバン市場(23%/65万台)やSUV市場(20%/88万台)の2倍近い市場規模だ。
そうした中フィットは、初代発売の2001年6月から2019年8月末の3代目までにおいて約268万台が販売され、2018年末の時点でも183万台が保有されている。これはホンダ車保有台数の17%だ。また、2019年1~8月末までのホンダ内シェアでは3代目フィットが5万9263台(シェア全体の22%)というから、フィットは名実ともにホンダの基幹車種であることがわかる(数値はすべてホンダ広報部発表)。
4代目フィットにも歴代フィットをはじめホンダ各車が大切にしてきたM・M(マンマキシマム・メカミニマム)思想が受け継がれている。M・M思想とは古くはホンダの軽自動車「N360」(1967年)にみられる「居住空間を最大にして機械が占有する体積を最小にする」という考え方だ。
フィットでは初代からガソリンタンクを車体中央部の前席床下部分に配置するセンタータンク構造を採用することで居住空間を拡大。これにより、後席座面を後方へ跳ね上げることで後席空間をまるまるラゲッジスペースとして活用することが可能となり、この使い勝手のよさからフィットの認知度が飛躍的に高まった。
最大の武器は「運転席からの視界」
文末になるが、Aピラー(柱)を2つに分けることで実現した運転席からの視界は、新型フィット最大の武器だ。これは、フロントウインドを支えるための前側にある細いAピラー(開発陣は「Aダッシュピラー」と呼んでいた)と、衝撃を吸収してボディ全体に受け流すドアミラー付近の太いAピラーで構成されている。
2本のAピラー構造によって、フロントウインドを大きく、そして可能な限りひずみなく設置することができた。加えて、単に有効な視界面積が広がったことだけでなく、歴代最高峰の衝撃吸収ボディでありながら、歴代フィット同様の広い車内空間を確保するなど、新型フィットでは設計段階から創意工夫を凝らすことで数々の相克課題をクリアした。この意義はとても大きい。運転していてもこの視界から得られる感覚は新鮮で、それでいてダッシュボード高とのバランスが図られているから路面が迫り来るような不安はない。
余談だが、フォルクスワーゲンの電気自動車(BEV)である「ID.3」も、新型フィットほどではないにせよ、2本のAピラー構造を持ち、広い視界を売り物にする。ID.3の場合は、AR協調型の大型ヘッドアップディスプレイを使うため、ひずみの少ない広いウインドが必要であったとフォルクスワーゲンの開発陣は筆者のインタビューに答えてくれた。
広大な視界は新型フィット最大の武器だ。これは当サイトの画像だけでは読者の皆さんに伝わりきらないと思うので、発売後、ぜひともディーラーに足を運びご確認いただきたい。
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