男性3割が「とるだけ育休」で形のみの深刻実態 小泉環境相の育休取得で空気は変わるのか

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そもそも「育児休業」とは、子を養育するためにする休業を言い、法律上は原則として1歳未満の子のいる男女労働者の申し出により取得することができます。1歳まで取得を希望する女性が多い中、男性の取得日数は「5日未満」が36.3%と最も多く、次いで「5日以上2週間未満」が35.1%、2週間未満が7割を超えている状況です(2018年度「雇用均等基本調査」厚生労働省)。

近年、育児休業の取得率100%を表明する企業が増えていますが、わずか数日、しかもそれがもし「とるだけ育休」であるとするなら、かけ声ばかりで女性に偏っている家事・育児の解消にはつながりません。

男性が育休を取得しない理由1位は?

男性の育休取得率が6.16%(2018年度「雇用均等基本調査」)にとどまる中、職場において取得を促す動きは大きな意義があるといえます。

連合の「男性の家事・育児参加に関する実態調査2019」によると、男性に育児休業を取得しなかった理由で最も多かった回答は、「仕事の代替要員がいない」(47.3%)、「収入が減る(所得保障が少ない)」(36.6%)、「男性が取得できる雰囲気が職場にない」(32.2%)と、職場の理解やサポートがあれば改善できる余地があることがうかがえます。

一方、たとえわずかな期間であっても仕事にブランクができることで、昇進や昇給に悪影響が出ることを懸念する声もあります。

上司・同僚が育児休業を取らせないようにすること自体がパタニティ(父性)ハラスメント(以下、「パタハラ」)に当たりますが、育休を取ったことで昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行ったり、賞与などにおいて不利益な算定を行ったりすることや不利益な配置の変更を行うこともパタハラに該当します。

連合の同調査では、育休取得後に「復帰したら嫌味を言われた」(15.3%)、「責任ある仕事を任されなくなった」(8.3%)、「昇進・昇給できなかった」(6.9%)、「低い人事評価を受けた」(4.2%)という回答もあり、パタハラ行為が見られます。

育児・介護休業法では、事業主にパタハラを防止する措置を義務付けていますが、男性の育休取得に無理解な職場がいまだに少なくありません。人手不足で残業の多い職場では、特に風当たりが強くならぬように、十分な配慮をしていく必要があるでしょう。男性の育休取得を推進するには、パタハラに対する正しい理解とともに、上司のマネジメントがカギを握ります。

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