身近でもできる「新型肺炎」に感染しない予防策 初期症状は風邪と区別をつけるのが難しい
こうした事態を受けて、いま私たちが知っておくべきことについて書きたいと思います。
そもそも、コロナウイルスとは、風邪の原因の10%前後を占めるウイルスです。ヒトに日常的に風邪として感染するコロナウイルスは4種類あり、冬に流行のピークがみられます。
一方、動物の間で感染するコロナウイルスもあります。それが種の壁を超えて動物からヒトに感染し、ヒトからヒトに効率よく感染し、病原性が強いと重症肺炎を引き起こすことがあります。
2002年に中国広東省で流行したSARS(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス)や、2012年にサウジアラビアで流行したMERS(中東呼吸器症候群コロナウイルス)も、こうして種の壁を超えて発生し、重症肺炎を引き起こしたコロナウイルスの一種です。WHOの報告(2003年12月時点)によると、疑い例を含むSARS患者数は8069人、そのうち775人が重症の肺炎で死亡しており(致命率9.6%)、MERSは27カ国で2494人の感染者数(2019年11月30日時点)であり、そのうち858人が死亡した(致命率34.4%)といいます。
発表されているデータを見る限り、現時点では新型肺炎により死亡した割合は、SARSやMERSよりは低いと言えますが、北海道大学の西浦先生らのチームは「中国当局が発表している感染者数は、過小評価の可能性も高い」と分析しています。
武漢市のJin Yin-tan病院のHuang氏らが1月24日にランセット誌に発表した報告によると、2020年1月2日までに新型肺炎にて入院した患者41人のうち、糖尿病や高血圧、心血管疾患を含む基礎疾患を有する患者は32%であり、年齢中央値は49歳、発症時の初期症状として、発熱(98%)、せき(76%)、および筋肉痛または疲労感(44%)を認めたと言います。
初期症状を見る限り、これは風邪との見分けがつきません。この時期であれば、インフルエンザもまだまだ流行しており、区別はつけにくいと言わざるをえないでしょう。
私たちができることはインフルエンザ・風邪予防と同じ
では、どのタイミングで受診すればいいのでしょうか。武漢に渡航した方、もしくは武漢から帰国して具合が悪くなった方と接触歴のある方で、せきがひどくて息が苦しい、倦怠感が強いなどの重症の兆しがあれば、事前に医療機関に連絡したうえで、受診する必要があります。
現時点では、コロナウイルスに対する予防接種はありません。21日のCNNの報道よると、米国立衛生研究所はワクチン開発にすでに着手しており、臨床試験が始まるのは数カ月先になるとのこと。また4日にはブルームバーグが、アメリカに本社を置く大手バイオ製薬会社のギリアド・サイエンシズがエボラ治療の試験でほかの2剤に劣って検討対象外になった抗ウイルス薬Remdesivir(レムデシビル)を新型コロナウイルスの治療薬として有効かどうか臨床試験を行うことを報じました。
ワクチンや治療薬の開発が急がれているところではありますが、現時点では新型コロナウイルスに対するワクチンや治療薬はありません。症状を和らげる対症療法が中心です。
流行している現状を受けて、私たちができることは、体力の維持、栄養や睡眠をしっかりとる、免疫の低下を防ぐ、そして手洗いでしょう。風邪やインフルエンザ予防と同じです。
油断できない状況ではありますが、これ以上の感染拡大と事態が深刻にならないことを願うばかりです。
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