訥々とした口調で語ってくれる博明さん。謙虚さがにじみ出ていて好感が持てる人物だが、積極的に会話を盛り上げるほうではなさそうだ。聞けば、女性と交際した経験は「ないと言っていい」とのこと。20代半ばで会社の後輩女性に好意を持ち、何度かデートはしたけれど、恋が実ることはなかった。その後、恋愛や結婚を求めてはいなかったのか。
「中学時代からつるんでいる友達が3人いて、彼らはまだ1人も結婚していません。その影響が強かったのかもしれません。先ほどお話ししたスポーツは地方大会に参加するほどハマっていて、週末はそれに打ち込んできました」
そんな博明さんが婚活に興味を持ったきっかけは、一緒にスポーツをしている同い年の友人に恋人ができたことだった。女性と付き合っている姿が想像できない友人だっただけに、博明さんは初めて焦りを覚えた。
「結婚願望自体は今でも高くありません。でも、5年後10年後に活動を始めても、時すでに遅しで後悔すると思ったんです。今のうちに(婚活を)ちょっとやってみようかな、と」
交際を決めた判断基準
引っ込み思案な性格を自認している博明さんは、大勢の男女が総当たり方式で交流する婚活パーティーに参加する気にはなれなかった。母親から結婚相談所を勧められたが、今度は費用面が気になった。
「私は昔から株などの投資をやっていて、お金には敏感に反応してしまうのです。ネット記事などを見て、複数の女性スタッフで運営していて雰囲気がよさそうで、入会金も月会費も安いところを見つけました」
入会後、自分からお見合いを申し込んだ3人からは返事がなかったのは先述のとおりである。ただし、条件のいい博明さんは女性からお見合いを希望されることが多かったため、受け身の立場でも問題はなかった。申し込んでくれた約30人の中から10人とお見合いし、加奈さんとの交際を決めた判断基準は何だったのか。
「土日にしかお見合いをしていなかったので、全員と会うことはできません。少しだけ選ばせてもらっていました。見た目が好みであるか否かはやっぱり重要です。それから婿養子に入ってほしいという希望は私にはかなえられません。私は子どもは欲しくないし、共働きがいいので専業主婦になりたい人も遠慮しました」
博明さんの場合、実際にお見合いしたのは3人に1人だった。より条件がいい男女には申し込みがさらに集中する。選ばれてお見合いにこぎつけるためには、うそのない範囲で自分をアピールしなければならない。つまり、プロフィールに何を書くか、写真をどうするかは最重要なのだ。文章が短すぎたり、写真がいい加減なものだったりすると、まだ会ってもいない相手から「真剣度が低い」と判断され、自らの可能性を狭めてしまう。
当然のことだが、交際に進むか否かは顔を合わせてからの相性次第である。2人の場合、会話上手とは言えない博明さんに対して、加奈さんのほうがいろいろと話しかけてくれた。
「私も緊張せずに話せました。会話が途切れても悪い雰囲気ではなかったと思います」
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