ビットコインという「通貨」の正体 なぜ日銀・黒田総裁は「通貨でない」と発言したのか

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ここで次の問題に移らないといけない。ビットコインをもてはやすだけでなく、実際に保有している人々、彼らにとって、ビットコインは本当に通貨なのだろうか。

通貨における、最も重要な点とは? 

「これまでの議論で、お前がそう言ったではないか」、と言われそうである。だが、ビットコインを通貨として受け入れる人々の間ではそれは通貨であるのであって、ビットコインを通貨としてではなく、別のモノとして保有していれば、それは通貨ではないことになる。

これが、実は、政府や日銀の公式見解の考え方である。通貨とは、幅広いモノの取引の決済に使われるものであって、そうでない限り、それは通貨ではないのである。これは金も銀も同じだ。

では、ビットコインを保有している人々は、ビットコインを何として保有しているのか。それは間違いなく金融資産として保有しているのである。

金融資産とは何か。それは、将来、第三者である他人に売ることを、それもある程度幅広い候補者のいる市場で売ることを想定している資産のことである。流動性の高いものもあれば低いものもあるが、転売可能性を視野に入れている資産はすべて金融資産である。

だから、ゲームにおけるコインもアイテムも、転売可能であれば、それは金融資産である。交換が頻繁に起こればそれは通貨であり、将来への投資、投機を視野に入れて、売ることを考えていれば金融資産である。

これが通貨におけるもっとも重要な点である。つまり、通貨とは金融資産であり、特殊な金融資産であるに過ぎないということである。

すなわち、通貨は、モノの取引媒介手段としても使われるが、貨幣の決済機能とは、貨幣の価値が失われない、すなわち貨幣の価値保蔵機能が高いことにより支えられている。そうでないと、受け取ってもらえないからだ。

受け取ってもらえるということ、つまり「貨幣の信用」が決済機能と価値保蔵機能を支えているように見えるが、逆も真なりで、この両者が貨幣の信用を作っているのだ。これが、「貨幣が貨幣であるのは貨幣が貨幣であるから」であり、貨幣が貨幣であることにより、貨幣として使われると貨幣はより貨幣になる、という岩井克人氏の自己循環理論なのだ。

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