しまむら、苦境の裏で決めた「異例の社長交代」 わずか2年で交代、新社長が超えるべき課題

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商品施策においても、本部主導で行う在庫管理のずさんさが目立ち始めている。店舗立地が地方から都市部まで多様化した今、同じ「ファッションセンター しまむら」と言っても店舗によって顧客層は大きく異なる。

にもかかわらず、しまむらではサプライヤーから仕入れた膨大な種類の商品をどの店に何枚投入するかは、主に本部の担当者の勘に頼って決めてきた。値引きも個店ごとの判断ではなく、全国もしくは地域別に一律で行うことが基本だ。結果として、店舗によっては売れるはずの商品が足りず、逆に需要の少ない商品が大量に投入されるといった事態が起きやすくなっている。

商品部の人員を1割増やす

こうした状況には会社側も課題意識を持ち、個店別に最適な量やタイミングで発注・値引きを行うための商品管理システムを来期から導入する予定という。「品ぞろえを全国一律で考えるのではなく、顧客層など店舗ごとの特性に応じた商品管理を徹底したい」(鈴木氏)。

主力業態の「ファッションセンターしまむら」では、仕入れや在庫管理を担う商品部の人員を来期から約1割増やす方針。より顧客の需要を見極めた商品の仕入れや店舗への配分を実現できる体制を整える。

鈴木氏は「まずは集客の回復を最優先し、2021年度以降は取り扱うアイテムの拡充など業容拡大を検討する」と強調する。今年の秋には、ようやく自社のネット通販サイトも始動する見通しだ。”デフレの寵児”と呼ばれたしまむらは、消費者の価値観や購買手法も多様化した現代に再成長の一歩を踏み出せるのか。新体制で向き合う課題は山積している。

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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