「ひきこもりの長期化」が招くとても悲惨な結末 「自尊心の喪失」が当事者をさらに苦しめる

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このように、人間はもともと自分や他者の欠点に目が行くようにできているうえに、ひきこもりの方たちは世間から隔絶されて孤立し、自分を肯定する要素は1つとして見いだせないまま、罪悪感にさいなまれながら生きています。すると、自分の欠点以外に目が行かなくなり、「ダメな自分」を責め続けるわけです。

欠点だらけで、いいところが何1つない……。自分のことをそのようにしか思えなくなれば、自分でいいという自己肯定感など持てるはずがありません。あるのは、「誰でもない自分」「何者でもない自分」という感覚です。

誰でもない自分、何者でもない自分とは、他者にとって「透明人間」にすぎません。他者にとっては無視する存在ですらなく、それ以前に、彼らの目には映らない、存在すらしていない透明人間、“インビジブルマン”なのです。

「自尊心の喪失」が彼らをさらに苦しめる

このように自分自身を感じるとき、人は生きながら、死んでいるのと同じような心持ちになるのだと思います。

『中高年がひきこもる理由―臨床から生まれた回復へのプロセス―』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

そうなると、服装にも食事にもかまわなくなり、お風呂にも入らなくなり、病気になっても病院にかかる気が起きません。つまり、セルフネグレクトの状態になっていくのです。

ひきこもっている方たちはこうして自尊心を持てなくなり、生きる意欲も欲求も失われていきます。自分が生きていていいとはとても思えなくて、こんな自分は社会にお世話になる価値はないと感じてしまうのです。

ですから、多くのひきこもりの方々は生活が苦しくなっても、社会に助けを求めるという考えすら浮かばない傾向にあります。

社会に助けを求めるという発想すらなく、また、自分には社会のお世話になるだけの価値がないと感じている……。そうなると、最悪、餓死することも考えられるのです。

桝田 智彦 臨床心理士

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ますだ ともひこ / Tomohiko Masuda

親育ち・親子本能療法カウンセラー。学生時代から作曲家を目指し20代前半にグループでプロの音楽家としてCDデビュー。その後、デザイン職とSCSカウンセリング研究所の准スタッフをしながら、音楽活動を継続したが、30歳を前に親友を不幸なかたちで亡くしたことにショックを受け、ひきこもる。SCS代表である母の取り組みによって、ひきこもりから回復。30代から大学・大学院へ進学し、臨床心理士資格を取得。精神科クリニック勤務経験を経て現在、SCS副代表、東京都公立学校スクールカウンセラーとして、ひきこもり・不登校支援に従事している。著書に『親から始まるひきこもり回復』(ハート出版)がある。

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