「ひきこもりの長期化」が招くとても悲惨な結末 「自尊心の喪失」が当事者をさらに苦しめる

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彼らの多くは親や世間が望むように外へ出たいし、仕事に就きたいと思っています。けれども、外へ出て、他者の冷たい視線、無能者を見るような蔑みの視線、不審者に対するような奇異な視線にさらされることが怖くて、家の外へ出られないのです。

さらに、ひきこもる期間が長くなればなるほど、他人の視線がますます気になり、そのため、ますます外へ出られなくなります。なぜなら、自己肯定感が低下するにつれて、セルフイメージ(自分に対する印象)も低下していき、そして、セルフイメージの低い人が最も気にするのが、他人の視線だからです。

セルフイメージが高い人は自信に満ちていますから、他人にどう見られているかをさほど気にかけません。逆に、セルフイメージが低い人は自信が持てなくて、いわば自分の中に自信という「芯」がない状態です。そのため、「ダメなやつだと思われていないだろうか」などと、絶えずビクビクしながら、他人の目を気にするようになってしまうのです。

人一倍、他人の視線が気になるのですから、無職の中高年者が外出することへのハードルは、時を経るにつれて高くなるばかりで、ますます家にひきこもることになると言えるでしょう。

人間は「欠点ばかり」注目する生き物

こうして外へ出られないまま、ひきこもっていると、自分の欠点にばかり目が行くようになります。下の図を見てください。

出所:『中高年がひきこもる理由―臨床から生まれた回復へのプロセス―』より

ほとんどの方が、一部が欠けている円を選ばれたと思います。人間は他者に対しても、自分自身に対しても、欠けているところ、つまり欠点に注目するようにできているからです。

この特性は進化の過程で人類が獲得したものだといわれています。マンモスがいた先史時代、厳しい自然環境の中で、一歩間違えれば命を落としかねない脅威にさらされながら、人間は狩りをし、生活を続けてきました。

自分や自分の子孫たちの命を守るためには、自分自身や狩猟の仲間に欠けている点、住環境の不備など「あらゆるものの欠点」にいち早く気づいて、素早くそれを補い、修正する必要があったと思われます。

次ページなぜひきこもり当事者は社会に助けを求められないのか?
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