エマニュエル・トッド 歴史人口学者・家族人類学者--もし自由貿易が続くなら民主主義は消えるだろう


 保護主義の目指すところは経済活動を再浮揚させることです。保護貿易主義化が進めば輸入を再び拡大させることができる、それが保護主義のパラドックスです。過度の自由貿易は貿易を崩壊させてしまう。今回、世界規模の経済危機を引き起こしてしまったことは、その象徴です。

だが、多くの人は自由貿易と保護主義の違いを誤解しているようです。保護主義者は貿易に反対しているというわけではないのです。むしろ、具体的な状況から適切な貿易を作り出そうと試みるプラグマティックな人々なのです。それぞれの利益を調整しながら、前向きに解決しようと考える人たちなのです。

一方、自由貿易の絶対視は一つのイデオロギー。それは、「何もしなければすべてうまくいく、規制の存在しない市場がすばらしい」という考え方です。ただ、すべての国が保護主義的な政策を採用すべきだと主張しているわけではありません。欧州の解決策にはプラグマティックなアプローチとして、保護主義が必要。それには世界各国間での協調体制が前提です。

--保護主義というと、国や地域間で「対立のカベ」ができるような印象がありますが、協調的な保護主義とはどのような意味ですか。

現在の自由貿易とは何かという点から話しましょう。自由貿易という言葉はとても美しいが、今の自由貿易の真実は経済戦争です。あらゆる経済領域での衝突です。安い商品を作り、給与を押し下げ、国家間での絶え間ない競争をもたらします。

一方、協調的な保護主義は話し合いです。協調的な保護主義の下では、政府がいかに需要を浮揚させるかが優先課題。保護主義の目的は内需の再拡大にあり、各国の利害が内需の刺激策に結び付いています。保護主義経済圏を形成することが(安い生産コストの商品輸入を抑制させ)給与水準の上昇につながる。

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