東京地検が猛反発した「弁護士ブログ」の記録 見えないカルロス・ゴーン被告の取り調べ実態

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取り調べの平均時間のほかに最長時間でも乖離がある。高野弁護士がブログで開示した記録によれば、最長は2018年12月20日の12時間18分。1日10時間を超える日は3日あった(2018年12月6日、2019年4月14日、4月21日)。また、1日7時間以上10時間未満は37日だった。

だが、斎藤次席検事は1月23日の会見で「(実際の)取り調べは最も長くても1日6時間強だ」とした。すると、取り調べ開始から終了まで12時間18分と最も長かった2018年12月20日は、取り調べを開始した午前10時00分から終了した22時18分までのうち、昼食、夕食、弁護士や外交官との接見、そのほかの休憩時間に6時間費やしたことになる。はたしてそうしたことが本当にあったのだろうか。純粋な取り調べ時間が開示されていないだけに真相は不明だ。

高野氏のブログに示された情報が「まったく事実に反する」というのであれば、検察は「平均4時間弱」の根拠となる情報をきちんと開示すべきだろう。

必要な手続きは「お答えできない」

取り調べ時間だけでなく、自白の強要もあったのかどうかも焦点だ。ゴーン氏は1月8日に逃亡先のレバノンで行った会見で「自白を強要された」と述べた。斎藤次席検事は翌9日の定例会見と同様、1月23日の定例会見でも「自白の強要はなかった。取り調べの様子はすべて録音・録画をしている。その内容を見ていただければ、(検察の描いた)筋書きを押し付けたり、自白を強要したりしたということがないのは明らかである」とした。

そうは言ったものの、「録音・録画の内容を見るのに必要な手続きは」と記者に問われると、斎藤次席検事は「お答えできない。裁判の証拠となるべきもので、そこで出せればいちばんよかった。裁判に出す以外の目的で(録音・録画内容の)使用ができるかどうかは、直ちに(出せる)ということではない」と明言を避けた。

ゴーン氏は1月8日の会見で「今後、数週間以内に行動を起こす」と次なる”反撃”を示唆している。次なる一手の内容は不明だが、今後、ゴーン氏が検察批判をさらに強めた場合、検察は主張の根拠となる情報を開示せずに「事実無根」と言い続けられるのだろうか。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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