ロイヤルホストが3年続けて元日休業できた訳 使い勝手のよい「異日常空間」を目指す

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今でこそ好調なロイホだが、2000年代には「サイゼリヤ」などの低価格路線に押されて低迷した。15年連続して既存店が前年割れするなど業績は悪化し、運営方針も迷走。一時は調理人採用も凍結した。

2007年には当時の首席料理長・田島澄夫氏(故人)が、経営陣に「料理の味を守るためにコックを育ててほしい」と詰め寄り、それが受け入れられずに退社する騒動もあった。2011年に矢崎精二氏が社長となり、田島氏は「料理顧問」として復帰。ここから新経営陣は「ロイヤルホストブランド」を見直し、業績回復につなげていく。

低迷していた2000年代、同社が消費者アンケートをした際に、こんな回答があった。

「ロイヤルホストは、元カレです」

かつては愛したが、今は気持ちが離れた。でも心底から嫌いになったわけではないという意味のようだ。一方、最近のSNSでは「東京ディズニーシーのレストランみたい」というコメントもあった。こちらはレトロで少し本格的という意味だろうか。

「御三家」が通用する時代ではない

かつてロイヤルホストは「ファミリーレストラン御三家」と呼ばれた。ほかの2つは「すかいらーく」と「デニーズ」だ。

だが、こんな意識で商売ができる時代ではない。多くの業界で「御三家」は過去の話となった。例えばシティーホテル御三家は「帝国ホテル」「ホテルオークラ東京」「ホテルニューオータニ」といわれたが、今や国内資本だけでなく外資も入り乱れて集客を競い合う。

佐々木氏に「自宅の食事とは違い、外食店がお客に約束することは何か」を聞いてみた。

「いい時間を過ごしていただくことだと思います。飲食がおいしい、店が清潔、接客が心地よい、それとお客さまの楽しみ方で『いい時間』になる。そのお手伝いをしたいですね」

低価格訴求も多い現在のファミレス業界で、ロイホが競合と一線を画すのは「上質感がある」ことだろう。前述したステーキの価格も安くはないが、「少し奮発して利用できる価格」だ。消費者心理も専門の筆者は、「脱日常」よりも「異日常」の時代性を感じる。

忙しく働いても収入が伸びない時代、サラリーマンのお小遣い調査(新生銀行調べ)などの数字も、男性会社員で月3万6000円台となっている。

そんな時代に、例えばステーキ店なら、目の前の大きな鉄板で調理人が細かくカットしてくれる高級店は、多くの人には現実的ではない(非日常)。それよりも、自宅とは違う空間で1000円から2000円台で食事が楽しめる(異日常)。こちらを好む人も多いだろう。

ロイヤルホスト東京進出の成功モデルとなった「馬事公苑店」(東京都世田谷区)を1980年代に利用した筆者は、最近の復調を「1周回ってロイホ」だと感じている。先ほどの表現を借りれば、「元カレも意外に誠実でよかった」と再評価されたのではないだろうか。

高井 尚之 経済ジャーナリスト、経営コンサルタント

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たかい なおゆき / Naoyuki Takai

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『なぜ、人はスガキヤに行くとホッとするのか?』(プレジデント社)がある。

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